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不動産のQ&A 契約の解除と手付金の返還等

I 土地やマンション・一戸建てなどの売買に関するもの
【その3 契約の履行や解除等に関する問題】

契約の解除と手付金の返還等

Q1 マンションの購入申込みを行い、申込金を支払いましたが、こちらの都合でキャンセルをしたいと考えています、 申込金は戻ってくるでしょうか。

A1 宅建業法では、宅建業者は取引の相手方が申込みの撤回を行った場合は、受領した預り金を返還しなければならないと規定しています(宅建業法47条の2第3項)。購入申込みに際して支払った「申込金」は、物件の購入の意思を示すため等に支払った預り金ですので、自己都合によるキャンセルであっても返還されます。契約の締結前に支払う金銭がある場合は、その金銭を支払う理由と取り扱いについて、 売主や媒介(仲介)業者に確認をしてから支払うように注意しましょう。

Q2 自分の持っている家を売る契約をしましたが、自己都合で契約を解除しなければならなくなりました。契約を解除することはできますか。

A2 基本的に、当事者間で特段の定めがなければ、手付は解約手付とされ、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは買主は「手付放棄」、 売主は「手付倍返し」をして契約の解除をすることができます。あなたの契約の場合、売主ですので、「手付倍返し」による解除となりますが、 買主が「履行の着手」を行っている段階であれば、契約条項にしたがい、「契約違反」による「違約金」を支払い、解除することになります。

Q3 家を買おうと思っていましたが、先日、自宅から少し離れた辺りを散歩していた際に、完成間近の新築住宅を見つけました。自宅で物件の説明をするよう頼み、自宅で買受けの申し込みをました。3日前に、完成済みのその住宅の中で契約しましたが、駅から遠いので解約したくなりました。今ならまだクーリング・オフができますか。

A3 いったん契約をしたら、消費者であっても、原則として一方的に契約を取りやめることはできません。しかし、特定の取引に限って、契約の締結後も一定期間、消費者に熟慮する余裕を与え、その期間内であれば一方的に契約を解消することができる制度を「クーリング・オフ」といいます。複雑で高額な不動産の取引においても宅建業法37条の2で規定されています。宅建業法では、売主が宅建業者の場合で、テント張りや仮設小屋での販売、押しかけ訪問販売など「事務所等」以外の場所で売買契約を結んだような場合、宅建業者から書面によるクーリング・オフ制度について告げられたその日から8日以内に限り、解除通知書面を発信すれば無条件に契約の解除ができます。ただし、買主が、自宅または勤務先で売買契約に関する説明を受けることを申し出、そこで申込みあるいは契約をした場合には、無条件で申込みの撤回または売買契約の解除をすることはできないことになっています。今回の場合は、買主の申出により、自宅で買受けの申込みが行われているようなので、基本的にはクーリング・オフによる契約の解除はできないことになります。

Q4 マンションの売買契約を締結し、引渡しはまだ受けていませんが、地方に転勤が決まったために当分住めないことがはっきりしました。契約を解除し、手付金を返してもらうことができますか。

A4 転勤のために契約を解除する場合は、自己都合になるため、差し入れている手付金を放棄することになります(手付解除)。仮に、売主が「履行の着手」を行っている場合、手付解除はできませんので、「違約金」を支払って契約を解除することになります。自己都合による契約解除となれば、それなりのペナルティーを負うことになります。しかし、まずは、売主に事情を話して、売主の対応を確認することが重要です。

Q5 土地建物の売買契約をして、手付金を支払いました。契約日から1か月が経つと、手付解除はできない、という契約になっていますが、こういう契約は許されるのでしょうか。

A5 民法557条1項の手付けの規定は任意規定であり、一定期日を過ぎると手付解除ができないとする手付解除期日の特約を設けることはできます。しかし、売主が宅建業者の場合は、その手付けがいかなる性質のものであっても、解約手付とみなされ、相手方が履行の着手をするまでは、当該契約を手付解除することができます。また、これに反する特約で、買主に不利なものは無効となります(宅建業法39条)。なお、「売主(業者)および買主は、相手方が契約の履行に着手をするまで、または所定の期日までは手付解除できる」旨の特約が付された売買契約が締結された事案で、買主は、売主が履行に着手するまでか所定の期日までのいずれか遅い時期までは手付解除できるとして、売主が所定(手付解除)の期日到来前に「履行に着手」した場合であっても、買主の手付解除を認めた裁判例(名古屋高判平成13年3月29日)があります。