最新・宅地建物取引業法 法令集
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-200-(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)⑥違約金について違約金は、成約した場合に当該依頼者に請求し得る約定報酬額に相当する額であり、他の顧客からも報酬を受領できる見込みがあったとしても、その分を含めて請求することはできない。⑦履行に要した費用について宅地建物取引業者が契約の履行に要した費用を請求するに当たっては、現地調査に要する費用として、交通費、写真代、権利関係等調査に要する費用として、交通費、謄本代、販売活動に要する費用として、新聞・雑誌等の広告費、通信費、現地案内交通費、契約交渉に要する費用として、交通費、その他当該媒介契約の履行のために要した費用として明細書を作成し、領収書等で金額を立証して請求するものとする。⑧更新手続について契約の更新には依頼者の申出が必要であるが、この申出は後日の紛争を避けるため文書によって確認することが望ましい(標準媒介契約約款では文書による申出を更新の要件としている。)。また、更新の申出は、有効期間満了の都度行われるべきもので、あらかじめ更新することを約定することは許されない。なお、依頼者の申出はあっても、宅地建物取引業者が更新に同意しないときは契約は更新されない。⑨媒介契約の解除について媒介契約が当事者間の信頼関係によって成立するものであることにかんがみ、宅地建物取引業者に背信行為があった場合は、依頼者による解除が認められているが、特に宅地建物取引業者が宅地建物取引業に関して不正又は著しく不当な行為をしたときは、その行為の相手方が当該依頼者でなくとも解除が認められている。⑩特約について約定報酬額を超える違約金を請求する旨の特約等、依頼者に不利な特約は標準媒介契約約款による契約としては認められない。なお、一定の期間中に目的物件の売却ができなかったときは、宅地建物取引業者が媒介価額を下回る価額で買い取る旨の特約は、売主が宅地建物取引業者に安く売ることを義務付けず、売主の希望があれば宅地建物取引業者が買い取るべきことを定めたのみであれば差し支えない。一般媒介契約は、依頼者が重ねて依頼をする他の宅地建物取引業者を明示する義務を負う明示型となっているので、その義務を負わない非明示型とする場合には、その旨特約しなければならない。特約をするに当たっては、「8特約事項」の欄に「本契約では、約款第四条及び第十三条は適用せず、依頼者が乙以外の宅地建物取引業者に重ねて依頼する場合でも、その宅地建物取引業者を明示する義務を負わないものとします。」と記載し、「1依頼する当社以外の宅地建物取引業者」の欄と「2甲の通知義務」の第1号の箇所を斜線で抹消する等の方法によることとする。4建物状況調査を実施する者のあっせんについて宅地建物取引業者は、媒介契約を締結するときは、媒介契約書に「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」について記載することとする。また、依頼者が建物状況調査について認識した上で既存住宅の取引を行えるよう、宅地建物取引業者は依頼者に対して、建物状況調査に関して説明を行うことが望ましい。建物状況調査を実施する者のあっせんを行う場合には、あっせん先が既存住宅状況調査技術者講習登録規程(平成二十九年国土交通省告示第八十一号)第二条第五項の既存住宅状況調査技術者であることを同規程第五条第二項第二号の既存住宅状況調査技術者講習実施機関のホームページ等において確認した上で行うよう留意すること。また、建物状況調査を実施する者に関する単なる情報提供ではなく、依頼者と建物状況調査を実施する者の間で建物状況調査の実施に向けた具体的なやりとりが行われるように手配することとする。その際、建物状況調査を実施する者は建築士であることから、報酬を得て建物状況調査を行うには、建築士法第二十三条第一項の規定に基づく建築士事務所登録を受けている必要があることに留意すること。なお、建物状況調査の結果に関する客観性を確保する観点から、売却希望の依頼者及び購入希望の依頼者(交換希望の依頼者を含む。)の同意がある場合を除き、宅地建物取引業者は、自らが取引の媒介を行う場合にあっては、建物状況調査の実施主体となることは適当でない。また、宅地建物取引業者は、購入希望の依頼者(交換により既存住宅を取得しようとする依頼者を含む。)が建物状況調査を実施する場合には、あらかじめ物件所有者の同意が必要であることに留意すること。建物状況調査を実施する者のあっせんは、媒介業務の一環であるため、宅地建物取引業者は、依頼者に対し建物状況調査を実施する者をあっせんした場合において、報酬とは別にあっせんに係る料金を受領することはできない。5媒介価額に関する意見の根拠の明示義務について意見の根拠について(1)意見の根拠としては、価格査定マニュアル(公益財団法人不動産流通推進センターが作成した価格査定マニュアル又はこれに準じた価格査定マニュアル)や、同種の取引事例等他に合理的な説明がつくものであることとする。なお、その他次の点にも留意することとする。①依頼者に示すべき根拠は、宅地建物取引業者の意見を説明するものであるので、必ずしも依頼者の納得を得ることは要さないが、合理的なものでなければならないこと。②根拠の明示は、口頭でも書面を用いてもよいが、書面を用いるときは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づく鑑定評価書でないことを明記するとともに、みだりに他の目的に利用することのないよう依頼者に要請すること。③根拠の明示は、法律上の義務であるので、そのために行った価額の査定等に要した費用は、依頼者に請求できないものであること。取引事例の取扱いについて(2)媒介価額の評価を行うには豊富な取引事例の収集を行い同種、類似の取引事例を使用することが必要であるが、その場合には取引事例の中に顧客の秘密に関わるものが含まれていることを考慮− 200 −

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