不動産売買の手引(令和3年度版)
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調査結果の記録がないときは、「無」と説明されますが、この場合の「無」は「アスベストは使用されていない」ということではありませんので注意してください。なお、宅建業者に、アスベスト使用の有無の調査の実施自体の義務はありません。②アスベストの使用規制建物に使用されたアスベストのうち、特に吹付けアスベストは粉じん飛散による健康被害の危険性が指摘されており注意が必要です。アスベストの吹付け作業は、1975年に原則禁止され、1995年には茶石綿・青石綿、2004年には白石綿の製造・輸入・使用等が禁止されています。なお、一戸建住宅の屋根・外壁等に使用されていたアスベスト含有建材はアスベスト成型板と呼ばれ、非飛散性のアスベストです。アスベスト成型板は、切断、破壊などをしない限り大気中に飛散することはありませんので、健康への心配はないといわれています。しかし、物理的に破壊した際にはアスベストを飛散させる可能性がありますので、建物の増改築や解体などの場合は、飛散防止等の対策が必要になり、通常、解体費も割高になりますので注意が必要です。(2)建物の耐震診断①耐震診断の有無の説明宅建業者は、売主(所有者)・管理組合(マンションの場合)等が、建物(昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものは除かれます。)について、建築物の耐震改修促進法に基づき指定確認調査機関、建築士、登録住宅性能評価機関または地方公共団体が行う耐震診断を受けているかどうかを調査し、「耐震診断の記録があるときはその内容」を説明します。なお、宅建業者に、耐震診断の実施自体の義務はありません。②耐震設計に関する建築基準法の改正建築基準法は、昭和53年の宮城県沖地震後に、耐震設計基準が抜本的に見直され、昭和56年6月から「新耐震設計基準」が施行されています。その後に発生した平成7年1月の阪神・淡路大震災では、この「新耐震設計基準」で建てられた建築物については被害が少なかったことが報告されています。この「新耐震設計基準」によって建てられた建物については、①の説明義務の対象から除外されています。なお、木造建築物については、建築基準法の昭和56年改正において、壁(耐力壁)量規定等の見直しが行われましたが、平成12年には、さらに耐震性を強化するための大幅な改正が行われています。したがって、新耐震設計基準で建てられたマンションや平成12年改正以降の木造住宅については、正しく設計・施工等が行われていれば、一定の耐震性を有している建物と推定されます。ただし、個々の建物の耐震強度については、実際に「耐震診断」を受けない限り判断することは困難です。今後も大地震の発生が懸念されていることからも、築年数が経過した建物などの所有者等は積極的に耐震診断を行い、適切な耐震補強を行っておくことが必要です。25

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