不動産売買の手引(令和3年度版)
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10引渡後に不具合・欠陥が…引渡した目的物が、種類、品質または数量に関して、契約の内容に適合していないことを「契約不適合」(改正前民法の「瑕疵」と概ね同じ意味です。)といいます。例えば、雨漏りはないとして既存住宅の売買をしたのに、引き渡された建物に雨漏りがあった場合、品質に関して契約の内容に適合していない「契約不適合」があるということになります。他方、経過年数による建物・設備等の品質・性能の低下は、既存住宅としての品質等が契約の内容となっていますから契約不適合には該当しません。また、雨漏りが建物の引き渡し後に後発的原因によって発生した場合も、引渡し時の建物に品質等の不適合はなかったわけですから、契約不適合には該当しません。1契約不適合責任を追及するには売主は、契約内容に適合した目的物を買主に引き渡す義務がありますので、引き渡した目的物に契約不適合がある場合には、買主は売主に対して、完全な履行等を求めることができます。★追完請求等買主は売主に対して、完全な履行を図るため、売主の帰責事由の有無を問わず、修補などの請求(追完請求)を行うことができます。また、追完請求をしても、売主の履行の見込みがない場合は、代金の減額を請求(代金減額請求*)することができます。ただし、契約不適合について、買主に帰責事由がある場合は、売主に追完請求等を求めることはできません。*代金減額請求は、実務上の取扱いが未確定の部分も多いため、67頁の売買契約書の参考例では、規定はしていません。ただし、宅建業者が売主の場合は、宅建業法40条により、代金減額請求についても対応しなければなりません。★債務不履行による契約解除買主は、契約不適合(売主の債務不履行)があった場合には、売主の帰責事由の有無を問わず、基本的に、契約を解除することができます。具体的には、以下のとおりです。ただし、契約不適合について、買主に帰責事由がある場合は、売主に契約解除を求めることはできません。・債務の全部の履行が不能、または売主が全部の履行を拒絶する意思を明確に表示した。・債務の一部の履行が不能、または売主が一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したことにより、残存部分では買主の契約目的が達成できない。・売主に催告しても契約目的を達成する履行の見込みがない。・・・など買主は、売主に催告することなく、契約を解除できる。・売主に、債務不履行*があった。*契約及び取引上の社会通念に照らして軽微なものを除くなお、従来の瑕疵担保責任では、契約の目的が達成されない場合のみ契約解除が可能であったため、「軽微なもの」の取扱いが実務上未確定であるため67頁の売買契約書の参考例では、契約の目的が達成されない場合に解除ができるとしています。買主は、売主に催告の上、契約を解除できる。39

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