住宅賃貸借(借家)契約の手引(令和3年度版)
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8-2禁止又は制限される行為借家の転貸(また貸し)などは、貸主の承諾があればできますが、一般には禁止されています。ペットの飼育や楽器演奏等も禁止されている例が多いようです。部屋の模様替え等についても、原則として貸主の承諾が必要ですので、契約書の内容をよくみて確認してください。共同生活のルールとして禁止・制限されている事項に反する行為をすると、近隣とのトラブルの原因にもなります。ルールを守って生活しましょう。*禁止事項として定められたものでも、「借主は結婚したときは退去するものとする。」や「子供が生まれたときは退去するものとする。」等の特約は、特段の事情がある場合を除き、公序良俗に反する定めとして無効と解されています。8-3貸主の修繕義務貸主は、賃貸借契約が継続している間は、賃貸物件について、借主の居住に必要な修繕をする義務を負っています。貸主には、付帯設備(給湯器、エアコン等)の故障の修理や台風等により雨漏りしている屋根の補修、雨どいの修繕等、借主が居宅(室)として使用するのに必要な修繕をする義務があります。借主が、賃借物にこのような修繕を要する不具合を発見したときは、貸主に通知する義務があります。貸主に修繕を求め、貸主が修繕の必要性を知ったにも関わらず必要な修繕をしない場合、あるいは、急迫な事情がある場合には、借主が修繕を行い、必要費としてその費用を貸主に請求することができます。もちろん、借主の故意・過失等により修繕が必要となった場合は、貸主に修繕義務はなく、借主にその損害の賠償責任が生じます。「…の修繕は借主の負担とする」等の修繕特約をつけている場合があります。貸主・借主の合意による修繕特約は原則として有効ですが、裁判所は、「修繕を借主の負担とする特約は、原則として貸主の修繕義務を免除したにとどまり借主に修繕義務を負わせる趣旨ではない」と解しています(最高裁昭43・1・25)。電球の取替等の軽微な修繕の特約については有効と解されていますが、給湯器の取替等の多額の費用が必要となる大修繕の費用についてまで借主負担とする特約は、その効力が否定されることがあります。《参考条文》…公序良俗違反・賃貸物の修繕民法第90条公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。民法第606条賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。民法第607条の2賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。一賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知っていたにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。二急迫の事情があるとき。民法第608条賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。18

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