住宅賃貸借(借家)契約の手引(令和3年度版)
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9-2敷金とその精算建物賃貸借契約のトラブルで一番多いのが、この「敷金の精算」に関するものです。敷金(保証金)敷金とは、借主の賃料の滞納や不注意等による物件の損傷・破損等に対する修復費用等の損害金を担保するために、契約時に、貸主に預け入れるものです。したがって、借主に、賃料等の延滞や、建物に損害を与えた等の貸主に対する債務がなければ、契約が終了し建物が明け渡されたときに、敷金は全額、貸主より借主に返還されることになります。敷金精算と原状回復義務借主には、賃借物の明渡しに際し「原状回復義務」が生じますので、借主が賃借物に造作等の変更(エアコンの取付・棚の取付…など)を加えていたときは、造作等を撤去して原状に戻す義務が生じることになります。また、賃借物の損耗や汚損については、通常の使用によって生じたものや経年劣化によるものについては、借主に原状回復義務はありませんが、故意・過失等により賃借物に生じさせたものについては、借主に原状回復義務があります。ガイドラインとその考え方国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)において、原状回復の費用負担のあり方等について、近時の裁判例や取引等の実務を考慮のうえ、トラブルの未然防止の観点から現時点において妥当と考えられる一般的な基準を示しています。なお、ガイドラインは、平成23年8月に再改訂版が公表されています。原状回復の定義と負担区分ガイドラインでは、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。したがって、借主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等については、借主が負担すべき費用と考え、他方、例えば次の入居者を確保する目的で行う設備の交換、化粧直しなどのリフォームについては、経年変化及び通常使用による損耗等の修繕であり、貸主が負担すべきと考えています。23

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