制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例航空機騒音の告知義務
浦和地裁川越支部判決 平成9年9月25日
(判例時報 1643号 170頁)
《要旨》
航空機騒音の著しい地域の建売住宅を購入した買主が、売主業者に対して、その騒音の告知義務を怠ったとして請求した損害賠償が棄却された事例
(1) 事案の概要
買主Xら(3名)は、平成5年7~8月、売主業者Yから、土地付分譲住宅(全6棟)を4,000~4,450万円で買い受けた。
本件土地は、米軍基地の北側7.5kmの航空機航路の真下にあり、同基地を離発着する航空機の騒音が著しい地域にある。Yは、本物件の分譲にあたり、Xらに対し、住宅環境良好な場所との説明をしたが、航空機騒音等については告げていない。Xらは、入居後、580~870万円をかけて、防音工事を行った。
Xらは、平成8年、Yは不動産売買契約に付随する義務として宅建業法47条1号の重要事項の告知義務宅建業者は、その業務に関して、宅建業者の
相手方等に対し、重要な事項について故意に
事実を告げず、または不実のことを告げる行為を
してはならない(宅建業法47条1項)。を負い、本件土地が航空機航路の直下にあり、騒音等の著しい地域であることを調査告知する義務があるのに、これを怠ったのであるから、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。又は債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。上の責任があるとして、Yに損害賠償を求めた。
(2) 判決の要旨
(ア)売主業者は、業法35条所定の重要事項について、専門的立場から調査し、買主に説明ないし告知すべき義務を負っているが、公害問題については、同条所定の説明義務の対象とはなっておらず、業者が専門的立場から説明ないし告知すべき事項とはいえない。
(イ)職務の誠実性の観点から、告知義務を負う場合もあるが、本件のような航空機騒音については、Xらが事前調査、現地確認等で契約締結までに当然気付くべき事柄である。また、基地周辺の騒音は公知の事実となっており、騒音の程度も限られた時間内で、受け止め方に個人差がある。
(ウ)以上の点を考慮すると、Yが騒音の存在を意図的に隠したとか、Xが特に注文をつけたとかの特段の事情が認められない本件においては、Yが告知すべき法律上の義務はない。
(エ)したがって、YはXらに対し、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。または債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。上の責任を負わない。
(3) まとめ
本判決は、「受け止め方に個人差がある公知の騒音問題については、特段の事情がない限り、説明義務はない。」としている。他方、「航空機の騒音は、空港周辺の広範な地域に及ぶものであり、そのすべての地域において、業者が説明しなければならないとまではいえないが、騒音の程度が著しく、防音工事をしなければ生活に支障をきたすなどの状況がある場合には、その旨を説明する必要がある。」((財)不動産適正取引推進機構「不動産取引紛争事例集」83頁)とするのが一般的である。
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