制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例土壌の来歴や従前の使用方法の説明義務
東京地裁判決 平成18年9月5日
(判例時報1973号84頁)
(判例タイムズ1248号 230頁)
《要旨》
土壌汚染を発生させる蓋然性のある方法で土地利用をしていた売主は、買主に対し土地の来歴や従前の使用方法について説明すべき信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。上の付随義務があるとされた事例
(1) 事案の概要
土木建築工事の設計・施工等を業とする株式会社Xは、平成7年9月、建設産業機械等の販売等を業とする株式会社Yの所有不動産につき売買契約を締結し、平成11年7月に所有権移転、引渡しを受けた。平成14年夏頃、Xは本物件の一部の土地について土壌調査を行ったところ、鉛及びふっ素による土壌汚染が生じていることが判明した。
XはYに瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。の履行を求めたが、Yは交渉を拒絶した。Xは、本件売買契約締結時、本件土地に土壌汚染が存在しないものと誤信しており、目的物の性状に錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。があったので本契約は無効であると主張し、予備的に瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。、債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。に基づく損害賠償を求めて提訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)Xは、本件売買契約締結当時、本件土地の土壌汚染を認識せず、錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。に陥っていたが、表示されない動機の錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。に止まり、要素の錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。とはいえない。汚染除去費用は売買代金の21%で本件土地と代金額の均衡が著しく害されたともいえず、本件売買契約の意思表示は無効であるとのXの主張には理由がない。
(イ)汚染により本件土地の経済的効用及び交換価値は低下し、売買代金との等価性が損なわれているから、瑕疵が肯定されるべきである。取引の際に土壌調査を行う取引慣行は認められず、汚染の存在が外観上明らかとはいえないことから、本件の土壌汚染は隠れたる瑕疵であることは否定できない。土壌汚染は商法526条の発見することが困難な瑕疵に該当し、引渡し後6か月が経過した後には買主は売主に瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。を請求することができないと解されるので、引渡しの約3年後に土壌汚染調査をしたXは同責任に基づく主張をなしえない。
(ウ)本件売買契約の本旨は特定物である本物件を現状において引渡すことにあり、土壌汚染のない土地を引渡す義務を負うとまではいえないのが原則である。土壌汚染調査は専門的な知識及び多額の費用を要すため、買主が同調査を行うべきかについて適切に判断するためには、売主が土壌汚染を発生せしめる蓋然性のある方法で土地の利用をしていた場合には、売主は土壌の来歴や従前からの使用方法について買主に説明すべき信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。上の付随義務を負う場合もあると解される。
(エ)Yは、同説明義務の不履行によりXが土壌調査を行う必要はないと信頼したことによって被った損害の賠償責任を負うべきである。Xの落ち度も考慮すると、Yは損害(1億8千万円余)の4割を賠償する義務を負う。
(3) まとめ
本件は、土壌の来歴、使用方法に関する売主の説明義務に基づいて損害賠償責任を認めた事例である。事業所跡地や埋立地等において土壌汚染が発見されるケースがあり、媒介業者は常に土壌汚染の可能性に注意を払い、売主にも説明を求めることで錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。のない不動産取引を行う必要がある。
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