制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例隣人とのトラブルについての媒介業者の説明義務
大阪高裁判決 平成16年12月2日
(判例時報1898号 64頁)
(判例タイムズ1189号 275号)
《要旨》
隣人とのトラブルにより購入した建物に居住できなかったとして、買主が売主及び元付業者に対して求めた損害賠償請求が認められた事例
(1) 事案の概要
売主Yは、平成11年10月に本物件を買い受けたが、西側の隣人Aから「子供がうるさい」と苦情を言われ、洗濯物に水をかけられたり泥を投げられたりしたことがあり、自治会長や警察にも相談していた。また、Yは、A宅との間に波板の塀を設け、2階のベランダにも波板を付け、子供部屋を東側にする等の措置を講じていた。
Yは、平成13年9月ころ、本物件を売却しようと業者Z(元付)に媒介を依頼し、Xは、業者B(客付)に購入の媒介を依頼した。
平成14年3月3日午前、ZとBが本物件の別の購入希望者と現地を訪れたところ、Aは大声で苦情を言い、この取引は流れてしまった。しかし、同日午後、Xが子供とともに現地を訪れたときにはAからの苦情はなかった。
Xは、Zから「重要事項説明書」および「西側隣接地の住人の方より、騒音等による苦情がありました」との記載のある「物件状況等報告書」に基づいて説明を受けて売買契約を締結し、5月には代金2,280万円を支払って所有権の移転登記を受けた。ところが、6月にXが子供と現地に行くと、Aから「うるさい」と言われ、後日にも、警察を呼ぶ程の騒ぎになった。
本物件への居住を断念したXは、YとZに対して、説明義務違反があるとして不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。による損害賠償を請求したが、一審はその請求を棄却した。
(2) 判決の要旨
(ア)売主は宅建業者に仲介を依頼していても、信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。上、重要な事項につき事実に反する説明をすることが許されないことはもちろん、誤信させるようなことは許されないというべきであり、当該事項について説明義務を負うと解するのが相当である。Yは、引越後の隣人とのトラブルや3月3日午前の件をXに説明せず、また、最近は隣人との間で全く問題が生じていないという誤信を生じさせたのであるから説明義務に違反した。
(イ)宅建業者は、購入者が居住するのに支障を来すおそれがあるような事情について客観的事実を認識した場合には、当該客観的事実について説明する義務を負う。ZがBに対して、3月3日午前の件をXに伝えるよう連絡したとしても、Zの説明義務が尽くされたとはいえない。
(3) まとめ
隣人とのトラブルの内容は、様々なものがあると考えられ、実務上はプライバシーにも配慮しなければならない。本判決は、客観的事実をありのまま述べるにすぎないから法的に問題を生じるおそれはない等として媒介業者の説明義務違反を認めた。
なお、Xの損害を、売買代金2,280万円として、代金の20%相当額として、Y及びZにその支払を命じている。
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