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タイトル:裁判事例入居後間近かに高さ5mの要壁が建築された

千葉地裁判決 平成14年1月10日
(判例時報 1807号 118頁)

《要旨》
 環境を重視して不動産購入をしたい旨の依頼を受けた媒介業者が、周辺環境について十分な調査・結果を説明しなかったことは、契約上の調査・説明義務に違反するとされた事例

(1) 事案の概要
 平成10年10月頃、Xは、業者Y1に対し、子供が喘息なので、空気が良く、緑があるところの物件を希望する旨を伝えた上、媒介を依頼し、翌11月頃、Y1から、Y2が分譲する建売住宅の案内を受けた。その物件の南東側は約4mの水路敷きに接し、その先は高さ約10mほどの竹や雑木等が繁茂する小高い丘に続いていた。
 Y1は、市役所等で本件不動産について調査し、南東側の水路敷き先の隣接地が土地区画整理事業(くかくせいりじぎょう)
土地区画整理法にもとづいて実施される、
雑然とした市街地を整然とした街並みに
造り変えるため、または新しい市街地を
形成するために行われる事業。
用地であること及び近くに公園ができることを確認し、Xに対し、図面を見せ、公園の位置について説明した。同年12月、XとY2は、本件不動産を2,750万円で売買する契約を締結し、Xは、翌11年2月、本件不動産に転居した。
 ところが、その後、Xは、擁壁工事の施工業者の来訪を受けて、物件南東側の水路敷きに接した土地区画整理事業(くかくせいりじぎょう)
土地区画整理法にもとづいて実施される、
雑然とした市街地を整然とした街並みに
造り変えるため、または新しい市街地を
形成するために行われる事業。
用地の外縁部に、鉄筋コンクリート製の高さ約5m、長さ約103mの垂直擁壁が設置されることを知った。近隣住民に対しては、擁壁の設置に係る説明会が平成9年末までには実施されており、結局、工事は、平成11年2月から開始され、同年末頃完成した。
 Xは、擁壁の設置からくる精神的圧迫を免れるため、居間を2階に設置すべく改造工事を行ったうえで、Y1に対しては、擁壁の設置についての調査・説明すべき媒介契約上の義務を怠ったとして700万円余の損害賠償を、Y2に対しては、説明義務違反に基づく債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
責任を負うとして、同額の損害賠償の支払を求めた。

(2) 判決の要旨
 (ア)Y1は、Xの購入動機・目的を知っており、それは不動産を購入する際の重要な要素であるから、媒介業者としては、その動機・目的に反する結果が生じないよう注意する媒介契約上の義務がある。
 (イ)Y1は、公園建設の事実を把握したにとどまり、その内容の一環である擁壁の設置についての調査に至らず、この点の説明を欠いたことは、媒介契約上の調査義務ないし説明義務に違反しているので、住宅改装費用のうち、300万円を限度としてXに支払え。
 (ウ)Y2は、Xの購入動機・目的を知らなかったので瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
の主張は理由がなく、また、本件擁壁の設置予定を知らなかったから債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
責任についても理由がない。

(3) まとめ
 本判決は、売買の目的物ではなく、購入の動機となった周辺環境の悪化(大きな変化)について、売主業者及び媒介業者の責任を争った事例である。購入動機・目的を知っている媒介業者の調査・説明義務違反による損害賠償請求が認められた。

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