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タイトル:裁判事例隣地の建築計画の秘匿

東京地裁判決 平成11年2月25日
(判例時報 1676号 71頁)

《要旨》
 売主業者が、隣接地に建物建築計画があることを知りながらこれを秘匿して販売したとして、売買代金の2%相当の支払が命じられた事例

(1) 事案の概要
 買主Xらは、平成6年6月から7月に、売主業者Yと、新築マンションを、それぞれ2,620~3,960万円で買い受ける売買契約を締結した。
 本件土地の南側隣接地所有者Aは、社宅の建築計画を有しており、Yに対し、本件マンションの購入者が苦情申立て、損害賠償請求を行わない旨、重要事項説明書に明記することを申し入れていた。しかし、Yは、Aの建築計画があること及びAから申入れがあったことを告知せず、重要事項説明書には本件周辺において「将来建築基準法関係法令に基づく合法なる建築物を建築することに異議を申し立てないこと」と一般的に記載するのみで、Xらにマンションを売り渡した。なお、隣接地は、当時、雑木の疎林で、Yの販売用パンフレットにも「緑豊かな高台の閑静住宅地の中」との宣伝文句があった。
 Yは、平成7年8月本件マンションを完成させ、同月、Xらに引き渡し、Aの社宅は、平成8年2月末に完成した。Xらは、Aの社宅建築により、当初期待していた日照等の利益をほとんど享受できなかった。
 Xらは、YがAの建築計画のあることを秘匿し、告知しなかったことにより、多大の精神的苦痛を被ったとして、売買代金の1割の損害賠償の支払を求めた。

(2) 判決の要旨
 (ア)新築マンションの販売業者は、売買契約に付随する債務として、購入しようとする相手方に対し、購入の意思決定に重要な意義をもつ事項について、事実を知っていながら、故意にこれを秘匿して告げない行為をしてはならないとの義務を負っている。
 (イ)新築マンションの南側に隣接する緑地上に将来建物が建築されるか否かは、その区分所有建物を購入する者にとって、大きな関心事であり、売買契約締結の意思決定に重要な意義を有する事項である。
 (ウ)Yは、Aから文書をもって要請を受け、社宅の建築計画を告知することに何ら支障がなかったにもかかわらず、これを秘匿し、販売したのであるから、重要事項の告知義務宅建業者は、その業務に関して、宅建業者の
相手方等に対し、重要な事項について故意に
事実を告げず、または不実のことを告げる行為を
してはならない(宅建業法47条1項)。
を怠り、売買契約に付随する債務の不履行として、損害賠償責任がある。

(3) まとめ
 売主業者が、買主に対し、隣地の建築について承知しながら誤った説明をした場合、その責任を負わなければならない。損害額については、種々の事情を考慮して、一律売買代金の2%とした。

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