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タイトル:裁判事例隣地の建築についての虚偽の説明

東京地裁判決 平成10年9月16日
(判例タイムズ 1038号 226頁)
 (金融・商事判例 1061号 37頁)

《要旨》
 隣地に建築物が建築され、日照が大幅に阻害されたとする、中古マンションの買主による売買代金を上回る損害賠償請求が認容された事例

(1) 事案の概要
 買主Xは、平成6年7月、媒介業者Y2の媒介で、売主業者Y1から中古マンションを4,500万円で買い受けた。
 本件契約にあたり、Xが日照確保を重視していたところ、Yら(Y1及びY2)は、隣地には業者Aの建築計画があるが、本件マンションの区分所有者の承諾がなければ建築できないと説明した。また、Aの建築物は本件マンションと敷地の二重使用があるため、区役所がAの建築の説明会を7月5日に行うとYらに通知していたが、Yらは、Xにその説明をしなかった。Aの建築物は、平成6年8月建築確認を受け、7年2月完成し、Xの日照は1日30分程度となった。
 Xは、Yらが虚偽の説明をしたとして、損害賠償を求めた。 

(2) 判決の要旨
 (ア)Xは、日照の確保を重視し、その旨を表示していたから、本件マンションの区分所有者の承諾がなければ隣地に建物は建築できず、本件の将来の日照が確保されることが契約の要素となっており、Xに錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。
があった。
 (イ)Yらの従業員の説明は、結果的に虚偽であったといわざるを得ず、説明義務違反に該当し、Yらは使用者責任を負う。
 (ウ)したがって、Yらは、Xの売買代金、諸費用、借入金利息等及び弁護士費用、計5,276万円をXに支払え。

(3) まとめ
 本判決では、Yらが、区分所有者の同意がなければ隣地に建物を建築することはできないと説明したと認定した。Yらは、これを否認しているが、判決は、Yらの主張を斥けた。Yらは、過失相殺(そうさい)
2人の者が互いに相手に対して同種の債権を
持っているとき、相手方への意思表示によって
その債務を対当額で消滅させることをいう。
(かしつそうさい)
損害賠償額から過失相当分を差し引いて
損害を負担することをいう。賠償を受ける
者にも過失がある場合に、負担を公平に
行なうために適用される。
、損益相殺(そうさい)
2人の者が互いに相手に対して同種の債権を
持っているとき、相手方への意思表示によって
その債務を対当額で消滅させることをいう。
の主張をしなかったようであり、厳しい判決となった。

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