制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例隣地の高架道路建設計画の告知義務
松山地裁判決 平成10年5月11日
(判例タイムズ 994号 187頁)
《要旨》
隣地の高架道路建設計画を、買主に告知しなかった売主業者及び媒介業者に対して、損害賠償が命じられた事例
(1) 事案の概要
買主Xは、平成6年4月、媒介業者Y2の媒介で、売主業者Y1から、土地(149.13平方メートル)を3,575万円で買い受け、登記を移転し、同年11月に木造平屋建て居宅を建設した。
しかし、本件土地の南側隣接地は、県が、高さ8mの高架道路の建設計画を立て、用地買収を行ったうえ、平成6年3月には工事請負契約(うけおいけいやく)
家の建築工事など、当事者の一方がある
仕事を完成することを約束し、相手方が
その仕事の結果に対して報酬を支払うこ
とを約束するような契約を「請負契約」という。が締結されていた。Y1は、平成5年8月、媒介業者Aの媒介で、本件土地を買い受けたが、その際、Aから本件高架道路の建設計画があることの説明を受けていた。また、Y2は、Y1から本件高架道路の建設計画があることを知らされていなかったが、調査をすれば、容易に知ることができた。
Xは、本件契約に当たり、家庭菜園のできる日当たりの良い住宅地がほしいこと及び南側隣接地の一部を将来買い足したい希望を告げていたが、Yらは、Xに対し、本件高架道路の建設計画があることを一切告げず、Y2は買足しは不可能ではないとの口振を示した。
Xは、本件高架道路の建設計画を知らされていなかったため、敷地の南側に寄せて、平屋建ての建物を建築したところ、平成8年11月高架道路が完成し、高さ8mのコンクリート擁壁が垂直に立ち、圧迫感と日照、通風の被害を受けた。Xは、Y1には、債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。責任ないし瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。に基づき、Y2に対しては不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。責任に基づき、損害賠償を求めた。
(2) 判決の要旨
(ア)Y1は、本件土地売買の際、土地利用に支障を来たす南側隣接地に本件高架道路が建設されることを知悉していたにもかかわらず、Xに説明しなかったことは、不動産取引業者として重大な契約上の義務違反である。
(イ)宅建業者として媒介したY2は、周辺土地の現況を調査し、その結果を説明報告すべき義務があるところ、本件高架道路の建設計画は、調査すれば容易に知り得たのに、これを怠った過失がある。Y1を信用していたとしても、媒介手数料を取得する以上、独自に調査を行う義務を免れない。
(ウ)Xに過失があるとするY1の主張は、本件高架道路の建設計画を告知しなかったY1から主張できる筋合いではない。
(エ)したがって、Yらは、Xに対し連帯して、物的損害及び精神的損害の合計1,512万円余を支払え。
(3) まとめ
本件では、媒介業者は、高架道路の建設計画を知らされていなかったが、調査すれば容易に知り得たとして、売主業者と連帯して、重い損害賠償を命じられている。
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