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タイトル:処分事例「抵当権抹消交渉預り金」の不返還

《要旨》
 抵当権を抹消するための資金として預かった金銭を抹消交渉が不成立になったにもかかわらず返還しなかったとして、媒介業者が免許取消処分とされた。

(1)事実関係
 投資用マンションの所有者であるX1は、残存するローンの債務を整理して当該物件に設定されている抵当権を抹消するための資金として、「抹消交渉預り金」の名目で、業者Yに200万円を預託した。その上で、X1は、Yの媒介で、「抵当権の抹消交渉が抵当権者との間で成立することを条件とし、当該条件が不成立の場合は白紙解除となり、Yが受領した金員は返還する」旨の特約を付して、本物件をYの関連会社Aに売却する売買契約を結び、翌月、さらに同名目で100万円をYに預託した。
 その後、抵当権の抹消交渉は成立せず、Aからの代金の支払も履行されなかった。X1は契約を解除し、預り金の返還を求めたところ、Yは受領した金銭を全額返還する旨を書面で確約したが、期日までに返還しなかった。また、Yは本物件を第三者に売却する目的でX1から買い取る契約を締結したが、これも履行されなかった。
 X2は、X1と同様の趣旨で、450万円をYに預けたが、抵当権の抹消交渉が成立しなかったため、売買契約が解除となったにもかかわらず、Yは受領した金銭を返還しなかった。
 なお、X2に対しては、Yは実際の売買代金と異なる金額を記載した売買契約書を交付していた。

(2)事情聴取
 行政庁でYに事情を聴いたところ、Yは事実を認め、返金を約束したが、その後もX1には全く返還せず、X2については160万円を返還したのみであった。また、Yは同様の被害を他にも8件発生させていた。

(3)処 分
 行政庁は、Yは、抵当権抹消交渉預り金を返還しなかった、売買契約の代金額とは異なる金額を記載した売買契約書面を二重に作成して売主X2に交付した、他にも同様の被害を生じさせており、情状が特に重いとして、Yを免許取消処分とした。

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