制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:契約成立・解除等に関するもの | トラブル事例中項目:ローン不成立の場合の特約 | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例ローン条項による契約解除
東京地裁判決 平成16年7月30日
(判例時報 1887号 55頁)
《要旨》
ノンバンクからの融資を拒否しローン条項に基づく契約解除が認められた事例
(1) 事案の概要
買主Xは、平成13年4月、業者Y2の媒介で、売主Y1から土地付建物を代金6,100万円で購入し、手付金250万円を支払った。
本件売買契約には、(ア)買主は、契約後速やかに「都市銀行他」に「4,000万円」の融資申込みをしなければならない、(イ)5月末までに融資の全額または一部について承認が得られない場合は、本件売買契約は自動的に解除となる、(ウ)買主が4月末までに、金融機関等に対して必要な書類を提出せず、売主が催告をした後に5月末日を経過した場合、または買主が故意に虚偽の証明書等を提出した結果、融資の全部または一部について承認が得られなかった場合には、(イ)の規定は適用しない等とするローン条項があった。
Xは、売買契約締結後、都市銀行や信用金庫に融資を申し込んだ。また、Y2に勧められたノンバンクであるA社に対しては、申込みはしたものの、銀行などに比べ金利が高いという理由で、申込みの翌日にそれを撤回し、1か月後には提出書類の返却を受けた。結局、都市銀行や信用金庫からは、4000万円の融資希望額の一部につき承認が得られなかったため、Xは、同年5月28日付の内容証明郵便により、Y1に対して本件売買契約の解除の意思表示をし、手付金の返還を求めて提訴した。
Y1及びY2は、Xが融資の承認を得られなかったのは、X自らが融資を得るのに必要な手続きを採らなかったからである等として反訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)Xが本件売買契約以前にノンバンクから融資を受けるほかないことを了承していたことはない。さらに「都市銀行他」という文言は、都市銀行及びそれに類する金融機関を意味するものと解するのが自然であることを併せ考慮すると、ノンバンクであるA社は、「都市銀行他」に含まれないと認めるのが相当である。
(イ)XのY1に対する売買代金債務は同解除により消滅したと認められるから、XがY1に対して売買代金を支払わなかったからといって、Xが債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。責任を負う余地はない。よって、Y1のXに対する反訴請求は理由がない。
(ウ)本件売買契約が解除された場合、XとY2との間で、媒介手数料の支払請求権は消滅する旨の合意がなされていたものと認めるのが相当である。そして、本件売買契約が有効に解除され、Y2のXに対する媒介手数料支払請求権は消滅したものと認められるのであるから、Y2のXに対する反訴請求は理由がない。
(3) まとめ
宅建業者があっせんするローンについては、重要事項説明をするに当たって、買主が融資条件を確認できるようにするため、金融機関名、融資額、借入期間、金利、返済方法等を具体的に説明することになる。特に、金融機関名については、ローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 の成否をめぐるトラブルを避けるために、「都市銀行」等その業態・種類ではなく、具体的な名称まで特定しておくことが必要である。
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