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タイトル:裁判事例数量指示売買における代金増額請求

最高裁判決 平成13年11月27日
(判例時報 1768号 81頁)
(判例タイムズ 1079号 190頁)

《要旨》
 売買契約書に表示された面積より実際の土地の面積が過大であった場合に、民法565条の類推適用による売主の代金増額請求は認められないとされた事例

(1) 事案の概要
 Aは、平成4年3月、自己所有の土地を、平方メートル当たり15万円余に実測面積を乗じた金額を売買代金として、Xほか1名(持ち分は1/2ずつ)に売却することとし、土地の測量を測量事務所Bに依頼した。
 Bは測量会社Cに下請けさせたが、Cは、求積の計算を誤り、実際の面積である399.67平方メートルより59.86平方メートル少ない339.81平方メートルを実測面積と記載した求積図を作成してしまった。測量結果の誤りを知ったAは、Xらに対して、超過面積分の代金941万円余の支払を求めたが、Xらは応じなかった。
 このためBは、損害賠償及び迷惑料として、Aに1,000万円を支払った。他方Cは、Bに対し、損害賠償として600万円を支払う示談をし、このうち550万円は測量士賠償責任契約をCと締結していた保険会社Yが支払った。
 Yは、民法565条の類推適用により、又は売買契約の際のAとXらの間の清算の合意に基づき、損害賠償者及び保険者の代位によって、550万円を限度として、Xの持分に応じその半額の275万円の支払をXに対して求めたが、Xは、代金債務の不存在確認を求めて提訴し、Yは代金の支払を求めて反訴した。
 第一審(東京地判 平成11年6月4日)はXの請求を認め、第二審(東京高判 平成11年12月20日)は、Yの反訴請求を認容してXの本訴請求を棄却した。

(2) 判決の要旨
 (ア)民法565条は、数量指示売買(すうりょうしじばいばい)
売主が、一定の数量があることを契約において
表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が
定められた売買のこと。
において数量が不足する場合又は物の一部が滅失していた場合における売主の担保責任を定めた規定に過ぎないから、数量が超過していた場合に、同条の類推適用を根拠として売主が代金の増額を請求することはできないと解するのが相当である。
 (イ)Yは、数量超過の場合にXが追加代金を支払う旨の合意が当事者間に存在したとの主張をしているなどの点から、さらに審理判断をさせるため、本件を原審へ差し戻すこととする。

(3) まとめ
 数量超過の場合の代金増額請求については、これを認めない大審院の判決(明治41年3月18日)があり、本判決は、その立場に立つことを確認したものである。
 実務上、実測売買(じっそくばいばい)
土地の売買契約において、取引価額を実測
面積によって確定する場合をいう。暫定的
に登記簿の面積で売買を行い、後に実測面積
を確定して取引価額を精算することがあるが、
これも実測売買である。
では、契約書上で「実測により面積に増又は減があったときには、1平方メートル当たり○○円で精算する。」旨の条項を明記しており、増・減いずれの場合にも精算することになっている。

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