制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例手付解除の特約の解釈
名古屋高裁判決 平成13年3月29日
(判例時報 1767号 48頁)
《要旨》
「相手方が契約の履行に着手するまで又は所定期日までは手付解除できる」旨の特約の解釈について、売主業者の履行着手または所定期日のいずれか遅い時期まで手付解除できるとする解釈が相当とされた事例
(1) 事案の概要
平成12年5月9日、業者Xは、市街化区域内の農地を1,880万円でYに売却し、Yから手付金30万円を受け取った。
本件売買契約書には、「売主及び買主は、相手方が契約の履行に着手するまで、又は平成12年5月26日までは、この契約を解除できる」旨の条項が規定されていた。Xは、同月11日、本件契約に基づき農地転用届出書を農業委員会に提出し費用の立替えも行った。
しかし、その後Yは、本件条項が「相手方が履行に着手するまで」又は「5月26日まで」のいずれか遅い時期までは手付解除ができるものであるとの解釈(以下「乙解釈」という。)に基づき、同月16日、Xに対し手付放棄による契約解除の意思表示をした。
これに対しXは、本件条項は、「相手方が履行に着手するまで」又は「5月26日まで」のいずれか早い時期までは手付解除ができるものであるとの解釈(以下「甲解釈」という。)に基づき、すでにXが契約の履行に着手しているとして、違約条項に基づき、354万円余の違約金(いやくきん)
不動産の売買契約では、当事者の一方が債務
を履行しない場合には、債務の履行を確保
するために、その債務を履行しない当事者が
他方の当事者に対して、一定額の金銭(違約金)
を支払わなければならないと定めることがある。請求訴訟を提起した。
第一審(名古屋地裁岡崎支部判決 平成12年11月16日)は、甲解釈を正当と認めて、Xの請求を認容したが、Yはこれを不服として控訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)宅建業法39条3項によると、宅建業者自らが売主である場合、買主に不利となる民法557条1項の適用を排除する特約は無効であるから、甲解釈の場合、売主の履行着手前でも5月26日が到来する場合に買主の手付解除を制限することとなり、無効である。他方、乙解釈は宅建業法39条3項の趣旨である消費者保護に資する。
(イ)特別の知識を持たない通常人のYが本件解除条項を履行の着手(りこうのちゃくしゅ)
客観的に外部から認識できるような形で、
契約の履行行為の一部をなしたこと、
または履行の提供をするために欠くことの
できない前提行為をしたこと。の前後にかかわらず5月26日までは手付解除できると理解するのは至極当然である。
(ウ)本件手付解除条項の解釈は、乙解釈をもって相当とすべきであり、これと異なる原判決はこれを取り消し、Xの請求は棄却する。
(3) まとめ
本件は、業者売主・消費者買主の場合において、手付解除条項に関する民法及び宅建業法の趣旨を前提に、当事者の合理的意思解釈として、本件条項については、民法557条1項の場合に加えて、履行の着手(りこうのちゃくしゅ)
客観的に外部から認識できるような形で、
契約の履行行為の一部をなしたこと、
または履行の提供をするために欠くことの
できない前提行為をしたこと。後も手付解除ができる特約としての意義を有することが相当であるとしたものである。
なお、民法557条1項(履行の着手(りこうのちゃくしゅ)
客観的に外部から認識できるような形で、
契約の履行行為の一部をなしたこと、
または履行の提供をするために欠くことの
できない前提行為をしたこと。)の趣旨については、最判 昭和40年11月24日(判例時報428号23頁)がある。
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