制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
最新の情報については、
「RETIO判例検索システム」
「特定紛争案件検索システム」
「ネガティブ情報等検索サイト」(国土交通省)
「不動産のQ&A」
をご活用ください。
検索ボタンをクリックして頂くと、該当する事例の一覧が表示されます。
トラブル事例大項目:契約成立・解除等に関するもの | トラブル事例中項目:その他 | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例取引の危険性を告知すべき媒介業者の義務
千葉地裁判決 平成12年11月30日
(判例時報 1749号 96頁)
(判例タイムズ 1110号 150頁)
《要旨》
土地の所有権の帰属に疑念があったが、その取引の危険性を告知しなかったとして、媒介業者に損害賠償を命じた事例
(1) 事案の概要
平成8年4月、業者Yは業者Aから、Aが所有する土地の売却を依頼された。Yが確認したところ、土地の所有権は同年3月下旬にAに贈与され、それから1月経たないうちに、Aから法人B(代表者はAではない。)に移転されていた。これについてAは、債権者からの追求を避けるためである等とYに説明した。
買主X1は4月下旬に、買主X2は6月上旬に、Yの媒介により、Bとの間で各々分割された本件宅地のうちの一筆を購入する契約を締結し、月下旬に代金を支払い、所有権移転登記を受けた。
しかし、本件土地のAへの所有権移転は、Aが、同年1月に死亡した真の所有者の印鑑証明書等を偽造して法務局に提出し、遺族に無断で所有名義を移したものであった。Aが法務局に提出した印鑑証明書には「複製」の文字が一見して認識できるぐらいに浮き出ていたが、登記官は偽造に気付かず、この登記申請を受理していた。
真の所有者の相続人による、所有権移転登記の抹消を求める訴訟により、平成9年3月、Xらへの所有権移転登記は抹消された。
Xらは、Yに対し、Aによる詐欺(さぎ)
他人を騙すことにより、その者に誤った動機を抱かせること。の事実を知りながらこれを告知しなかったなどとし、また、国に対し、明らかに偽造とわかる登記申請書類を看過して移転登記を行ったとして、売買代金等相当額の損害賠償を求めて提訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)仲介業者には、売主とされる者が真実その物件の所有者であるか否かの確認をすべき義務を有する。売主が所有権者として登記されていることについて、疑問を抱かせるような事情がある場合には、媒介業者は、その所有権取得の経緯について調査し、権利の帰属が間違いないか確認するとともに、その確認が充分にできない場合には、少なくとも、その売買の危険性について、買主に注意、助言すべき義務がある。
(イ)Yは、Aへの所有権の帰属について疑念を抱かせる状況があったにもかかわらず、何ら確認をせず、かつ、土地取得についての疑問とそれに伴う取引の危険性をXらに告知しなかったのであるから、専門業者として必要とされる注意義務を欠いていたというべきである。その結果、真実の所有者でない者と売買契約を成立させたYは、Xらが被った損害を賠償すべき責任を負う。
(3) まとめ
所有権登記が短期間のうちに転々と移転されている場合等、物件を取得した経緯に不自然な点があれば、媒介業者は、権利の帰属について調査、確認を行い、疑問が解消されない場合には、媒介を取り止めたり、買主にその旨助言して、注意を喚起すること等が必要となる。なお、本件では本件印鑑証明書の不自然さに気付かず、必要な調査を行わずに虚偽の所有権移転登記を作出した登記官の違法な公権力行使が認められ、国の損害賠償責任が認められた。
本システムの掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、利用者が本システムの情報を用いて行う行為については本システムの制作者、運営者は何ら責任を負うものではありません。また、同種の事案について、必ず同様の結果が得られるものではありませんのでご承知おきください。なお、個別に発生したトラブル等については、管轄の行政庁等の相談窓口等にお問い合わせください。 |