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タイトル:裁判事例新築マンションの分譲直後から生じた外壁タイルの剥離

福岡高裁判決 平成18年3月9日
(判例タイムズ1223号205頁)

《要旨》
 新築マンションの分譲直後から生じた外壁タイルの剥離・剥落について、売主の損害賠償責任が認められた事例

(1) 事案の概要
 Xら6名は、平成10年12月から平成12年4月にかけて、売主業者Yから本件マンションを購入した。本件マンションは平成10年12月に竣工し、総戸数は260戸であった。
 本件マンションの外壁タイルは、高級感や意匠性を重視した重量感のある特注タイルが使われていたが、購入直後から剥離・剥落が発生し、大規模な修繕が必要となった。Yはその費用負担により外壁タイルの補修工事を実施したが、工期は1年4か月に及び、Xらは、騒音・粉塵に悩まされ、種々の生活上の不便や心理的な負担を感じた。
 管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。
は、平成15年6月の総会で、外壁タイルの剥離・剥落による保証につき和解する旨を協議し、その結果Yとの間で和解が成立した。しかし、Xらは、外壁タイルの剥離・剥落及びその補修工事の騒音等により損害を被ったと主張し、Yに対し、本件マンションの交換価値の下落に伴う財産的損害、慰謝料等を求めて提訴した。1審はXらの請求を棄却し、Xらが控訴した。

(2) 判決の要旨
 (ア)本件マンションでこの瑕疵が顕在化したことから一度生じた、、本件マンションの新築工事には外壁タイル以外にも施工不良が存在するのではないかという不安感や新築直後から施工された大規模な本件補修工事による一般的に受ける相当な心理的不快感、ひいてはこれらに基づくXらの購入物件の経済的価値の低下分は、Yが実施した本件補修工事によっても到底払拭し難いといわなければならない。
 (イ)本件では、外壁タイルの施工不良が新築直後から顕在化していることからしても、この瑕疵による各室の交換価値の低下分をYの瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
でもって填補する必要性は大きいといわなければならない。
 (ウ)本件補修工事そのものは、本件マンションの他の居住者とともにXらも受忍しなければならないが、本件補修工事から受ける騒音・粉塵等による生活被害についてまでその負担を強いられるものではない。これらの生活被害は、売主であるYの負担によって回復されるべきである。すなわち、Xらの生活被害についても外壁タイルの剥離・剥落に基づく被害に通常含まれるものとして、Yが賠償しなければならないと解するのが相当である。

(3) まとめ
 本件では、補修工事後も残存する交換価値の下落を売主の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
とし、財産的損害のほか、慰謝料、弁護士費用を含めて78万円余ないし247万円余が認められている。

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