制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例欠陥マンションの売買契約と媒介業者、銀行等の責任
東京地裁判決 平成10年5月13日
(判例タイムズ 974号 268頁)
(金融・商事判例 1046号 5頁)
《要旨》
修理不能な雨漏りのあるマンションを、その事実を秘して買主に購入を勧め、契約を締結させた、媒介業者、銀行、税理士に損害賠償を命じた事例
(1) 事案の概要
買主Xは、昭和63年5月、相続税対策のため、顧問税理士Y3の勧めにより、Y4銀行から7億2千万円の融資を受けて、Y2の媒介で、売主Y1から賃貸用マンション1棟を6億7千万円余で買い受けた。
本件マンションは、Y4がその重要顧客であるY1にマンションの建設を勧め、施工業者Aに赤字受注させ、昭和60年10月に建築したものであったが、61年頃から雨漏りがあり、応急措置で一時的には止まったものの、いつ再発するか分からず、Aが責任上買取りを考慮する程重大な不具合のあるものであった。しかし、Y2は重要事項説明の際「過去に雨漏りがしたことがあるが、修理をして、現在は止まっている」と説明し、Y3、Y4も、雨漏りの実態を知りながらこれを正さなかった。なお、Xは、Y3の要望に応じて本件マンションの土地の一部を、Y3に売却した。
Xは、契約締結後修理費600万円を受け取ったが、引渡しを受けてみると、雨漏りがひどく、台風による大漏水の発生により、設計・施工上の欠陥のため修理不能であることが判明した。Xは、平成4年、Y1に対し、Y3に売却した土地以外の契約を解除して、代金の返還を求める訴訟を提起して勝訴し(平成6年5月25日 東京高裁判決 判例タイムズ874号204頁 )、別途、Yらが、本件マンションが欠陥建物であると知りながら、これを告知せずに売却したとして、本件損害賠償請求訴訟を起こした。
(2) 判決の要旨
(ア)Y2については、媒介業者として重要な情報を告知すべき義務があるのに、意図的に売買契約の成否を左右する雨漏りはいつ再発するかわからず、重大な不具合である等の重要情報を隠したから、損害賠償義務を負う。
(イ)Y3については、契約交渉を主導した仲介者的地位からして、重要情報を告知する義務があるのに、Y2の説明を正さなかったから、損害賠償義務を負う。
(ウ)Y4については、Y1側の仲介者兼財務コンサルタントとして、重要情報を告知する義務があるのに、Y2の説明を正さなかったから、損害賠償義務を負う。
(エ)従って、Y2、Y3、Y4に対して連帯して、Xの請求額2億1,247万円の支払を命じる。
(オ)Y1については、雨漏りについての詳しい報告を受けておらず、その重大性についての認識があったとはいえないから、損害賠償義務は負わない。
(3)まとめ
媒介業者が「意図的に売買契約の成否を左右する重要情報を隠した」として、その責任を問われるのは当然であろうが、銀行及び税理士が主導的役割を果たしたとして、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。責任を問われた点では珍しい事例である。
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