制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:瑕疵担保責任に関するもの | トラブル事例中項目:建物の瑕疵 | トラブル事例小項目:戸建て |
タイトル:裁判事例建物の不等沈下と売主、造成業者、請負業者の責任
京都地裁判決 平成12年10月16日
(判例時報 1755号 118頁)
《要旨》
購入した建物が傾いたり、壁に亀裂が入ったり、雨漏りがするなどの欠陥が生じたのは、売主らの造成工事、建築工事に問題があったとされた事例
(1) 事案の概要
平成元年6月から平成5年5月にかけて、買主Xら(4人)は、売主Y1から土地建物を取得し、それぞれ引渡しを受けた。
しかし、Xらが入居すると、次第に、建物が傾いたり、壁に亀裂が入ったり、雨漏りがするようになり、時の経過とともに徐々に拡大・悪化していった。
Xらが各建物を建築したY2に苦情を申し立てたところ、Y2は、欠陥は各土地の売主であり造成業者でもあるY1の造成工事の不備に基づくものであり、Y2の責任ではない旨主張した。他方、Y1は、欠陥は、Y2のずさんな建築工事に基づくものであると主張した。
Xらは、建築業者ないし土地の売主であるYら(Y1及びY2)に対し、購入した土地や建物の瑕疵等を理由に損害賠償を請求した。
(2) 判決の要旨
(ア)地盤沈下の原因は、盛土(もりど)
傾斜のある土地を平らな土地にするために、
土砂を盛ること。地盤の支持力が住宅建築に相応しくない程度の極めて薄弱なものであったこと、支持力の強い切土(きりど)
傾斜のある土地を平らな土地にするために、
地面を掘り取ること。地盤と支持力の弱い盛土(もりど)
傾斜のある土地を平らな土地にするために、
土砂を盛ること。地盤という支持力の異なる異種構造の基礎に跨って建物が建築されたことであると推認される。
(イ)Y2は、敷地が盛土(もりど)
傾斜のある土地を平らな土地にするために、
土砂を盛ること。地盤であることを知りながら、異種構造基礎に跨って建物を建築したので、建築業者として負うべき建物の安全性確保義務に違反した。よって、民法709条に基づき、Xらの被った損害の賠償責任を負う。
(ウ)本件土地建物には、一般通常人の視点では容易に発見できなかった欠陥があったから、Y1はXらに対し民法570条の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。を負う。また、Y2は、民法634条に基づき、Xらの一部につき建築請負業者としての瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。を負う。
(エ)一般通常人が瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。に基づく解除の意思表示や損害賠償請求を行うか否かの判断を合理的に下すためには、瑕疵がある程度進行して、その内容程度が明確化したときから除斥期間(じょせききかん)
権利行使の期間が限定され、その期間内に
権利行使をしないと権利が消滅する場合をいう。
中断(ある事由により経過した期間が消え
ること)がないこと、相手方の援用(この
規定により利益を受けることの意思表示)
がなくても効果が生じることなどで消滅時効
とは異なる。が進行すると解する。本件では、Xらが建物の傾斜等を知ったときは被害が進行中であり、Xらは本件建物につき専門的観点に基づく診断を受けた時点から1年以内に提訴しているので、除斥期間(じょせききかん)
権利行使の期間が限定され、その期間内に
権利行使をしないと権利が消滅する場合をいう。
中断(ある事由により経過した期間が消え
ること)がないこと、相手方の援用(この
規定により利益を受けることの意思表示)
がなくても効果が生じることなどで消滅時効
とは異なる。は経過していない。
(オ)以上の判断を基に、Xらによる仮設・建物移動押上・改修・内装工事費用等の損害賠償請求を一部認容する。
(3) まとめ
本件では、建築業者の不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。責任と売主・建築業者の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。が認められたものであるが、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。の除斥期間(じょせききかん)
権利行使の期間が限定され、その期間内に
権利行使をしないと権利が消滅する場合をいう。
中断(ある事由により経過した期間が消え
ること)がないこと、相手方の援用(この
規定により利益を受けることの意思表示)
がなくても効果が生じることなどで消滅時効
とは異なる。の起算点を買主が単に被害を意識した時点ではなく、瑕疵の内容程度が明確化した時点と認定した点で、特色ある判断である。
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