制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:瑕疵担保責任に関するもの | トラブル事例中項目:建物の瑕疵 | トラブル事例小項目:戸建て |
タイトル:裁判事例中古住宅内の蝙蝠の棲息
神戸地裁判決 平成11年7月30日
(判例時報 1715号 64頁)
《要旨》
蝙蝠が多数棲息する中古住宅は、建物の価格に見合った快適さを備えていないとして、売主に補修・駆除費用等の支払を命じた事例
(1) 事案の概要
Xは、平成10年6月、元付業者Y2、客付業者Y3の媒介で、売主Y1から、中古住宅を3,380万円で買い受け、8月に入居した。
本件契約に当たり、Xが、Y1に「ムカデやゴキブリが巣を作っていないか」と尋ねたところ、Y1は、「見たこともない」と答えた。
しかし、本件建物内には数十匹の蝙蝠が棲息し、天井裏等に大量の糞があり、染み、カビが発生していた。Y1は、蜴幅が出入りしていたと思われる通風溝に沿って白布を張り、契約締結後の7月頃には他の建築業者に「糞尿で臭いがするので、天井の断熱材を替えたい」と言ったが、結局工事をしないまま、本件建物をXに引き渡した。
Xは、入居後、蝙蝠の駆除、糞尿の掃除、天井の貼替え等の工事を行って、113万円余を支払い、Y1らに対して、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。責任等に基づき、358万円余の支払いを求めて提訴した。
他方、Y1は、蝙蝠の棲息は、中古住宅にあっては鼠等の棲息と同様暇疵ではないと主張し、Y2は蝙蝠の存在は現況調査でも確認されなかったと主張、さらに、Y3は調査義務を尽くしていると主張した。
(2) 判決の要旨
(ア)住居用建物は、そのグレードや価格に応じ快適に起居できるこ
とも、備えるべき性状として考慮すべきであり、生物の特性や個体数によっては、生物の棲息自体が建物の暇疵となり得る。
(イ)本物件は、3,000万円を超えるもので、相応の快適さが期待され、Y1はXの質問にも、ムカデ、ゴキブリを見たこともないと答えたのだから、一般人において嫌忌すべき生物が多数巣くっていないという意味での清潔さ、快適さが合意されている。
(ウ)本件の場合、蝙蝠の数が極めて多数で、糞尿の量もおびただしく、Xはもとより、一般人の感覚でも、本件建物は価格に見合う使用性(清潔さ・快適さ)を備えたものとはいえないことは明らかであり、本件建物は暇疵がある。しかも、この瑕疵は取引上一般に要求される注意をもってしては容易に発見できないので、隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。であったといえる。
(エ)Y1は瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。について、補修・駆除費用等128万円余を賠償する義務がある。
(オ)Y2及びY3の責任については、不動産仲介業者が注意義務を負うとしても、特段の事情がない限り、蝙蝠の生息を確認するために天井裏等まで調査すべきとはいえず、調査しなかった過失があるとはいえない。
(3)まとめ
本件は、蝙蝠の被害について、価格に見合う快適さを備えていないとして、売主に対して補修費用等の支払いを命じたが、媒介業者については、特段の事情がない限り調査義務違反はないとして、買主の請求を棄却している。
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