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タイトル:裁判事例指針値を超えるホルムアルデヒドと瑕疵担保責任

東京地裁判決 平成17年12月5日
(判例時報 1914号 107頁)
(判例タイムズ 1219号 266頁)

《要旨》
 厚生省(当時)指針値を超えるホルムアルデヒド無色で刺激臭のある気体状の有機化合物で、
揮発性有機化合物のひとつである。ホルムア
ルデヒドは建材や家具に多く使用されており、
シックハウス症候群を引き起こす主要な原因
物質のひとつであると言われている。
濃度の建物につき、売主の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
が肯定された事例

(1) 事案の概要
 買主Xと売主業者Yは、平成14年7月、本件マンションにつき、売買契約を締結した。Yは、マンションの分譲に当たり「新築建物で発生しがちなシックハウス症候群(しっくはうすしょうこうぐん)
健在に使用された塗料、接着剤などに含まれる
揮発性有機化合物等の有害物質により発生する、
めまいや頭痛などの健康被害の総称。
の主な原因とされるホルムアルデヒド無色で刺激臭のある気体状の有機化合物で、
揮発性有機化合物のひとつである。ホルムア
ルデヒドは建材や家具に多く使用されており、
シックハウス症候群を引き起こす主要な原因
物質のひとつであると言われている。
の発生を抑えるために、JAS規格でもっとも放散量が少ないとされるFc0基準や、JIS規格のE1基準以上を満たした建材を使用しています。」などと記載した折込チラシやパンフレットを配布していた。
 Xは、平成15年5月、Yから本件建物の引渡しを受け、同年7月、保健所に依頼して、室内空気環境調査として簡易測定を行った。その結果、ホルムアルデヒド無色で刺激臭のある気体状の有機化合物で、
揮発性有機化合物のひとつである。ホルムア
ルデヒドは建材や家具に多く使用されており、
シックハウス症候群を引き起こす主要な原因
物質のひとつであると言われている。
の濃度については、玄関側洋室0.43ppm(約0.5375mg/㎥)、リビングダイニング0.49ppm(約0.6125mg/㎥)等の数値が検出されたため、Xは、Yに対して、本件建物がシックハウスであり、居住が不可能であると主張し、消費者契約法4条に基づく売買契約の取消し、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
による契約解除及び損害賠償等を請求した。

(2) 判決の要旨
 (ア)Yは本件マンションの分譲に当たり「環境物質対策基準」を充足する建材等を使用した物件である旨を本件チラシ等にうたって申込みの誘引をなし、Xが本件チラシ等を検討の上、Yに対して本件建物の購入を申し込んだ結果、本件売買契約が成立した。したがって、本件売買契約においては本件建物の備えるべき品質として、本件建物自体が少なくとも、当時行政レベルで推奨されていた厚生省指針値に適合していることが前提とされていたものと見ることが当事者の合理的な意思に合致するものというべきである。
 (イ)本件においては、引渡し当時における本件建物の室内空気に含有されたホルムアルデヒド無色で刺激臭のある気体状の有機化合物で、
揮発性有機化合物のひとつである。ホルムア
ルデヒドは建材や家具に多く使用されており、
シックハウス症候群を引き起こす主要な原因
物質のひとつであると言われている。
濃度は0.1mg/㎥を相当程度超える水準にあったものと認められることから、本件建物にはその品質につき、当事者が前提としていた水準に到達していないという瑕疵が存在するものと認められる。また当該瑕疵は科学的測定によって存在を知りうる性質のものであり、一般的な注意を払っていても容易に発見し得ないものであるというべきであるから、隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。
ということができる。これらの事実を考慮すれば、XはYに対し、売主の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
を追求できるものと認められる。

(3) まとめ
 いわゆるシックハウス症候群(しっくはうすしょうこうぐん)
健在に使用された塗料、接着剤などに含まれる
揮発性有機化合物等の有害物質により発生する、
めまいや頭痛などの健康被害の総称。
が社会問題となり、建築基準法が改正され平成15年7月から施行されている(居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置)。不動産取引における瑕疵については、範囲が拡大する傾向にあるが、本判決は化学物質による汚染の問題を瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
として取り上げたものである。

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