制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:瑕疵担保責任に関するもの | トラブル事例中項目:建物の瑕疵 | トラブル事例小項目:マンション |
タイトル:裁判事例浸水被害による新築マンションの契約解除
東京地裁判決 平成15年4月10日
(判例時報 1870号 57頁)
《要旨》
毎年のように発生する浸水被害は瑕疵であるとして、売主業者に対する契約解除及び慰謝料請求等が認められた事例
(1) 事案の概要
買主Xらは、売主業者Y1から、新築マンション105号室と108号室を購入し、平成7年12月21日までに、その引渡しを受けた。なお、本件は、いわゆる「青田売り(あおたうり)
元来は「稲が十分に成熟しないうちに収穫高を
見越してあらかじめ産米を売ること」の意味で
あるが、不動産業界においては、未完成の宅地
や建物の売買等をいう。」であった。
本件マンションでは、平成8年9月、一階部分の各室につき、床下浸水等の被害が発生した。平成11年7月にも、本件マンション一階部分の数室に床上浸水の被害が発生し、その後も、規模、被害の程度はさておき、年に一回以上、浸水被害が発生している。
Xらは、(ア)基礎杭の長さが基準より短縮されているために安全性に欠陥がある、(イ)構造計算上も建築確認と異なる建築工事が実施されている欠陥がある、(ウ)一階部分に毎年のように浸水被害が発生する欠陥がある、と主張して、Y1に対しては債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。責任、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。責任などを理由として、設計・監理会社であるY2に対しては不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。責任を理由として、被った損害の賠償を求めて提訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)杭長、構造には、これを直ちに違法、または、建物として通常有すべき安全性に欠けると認めるに足りる証拠はない。
(イ)本件マンションの完成直前に、一階部分に浸水する事故が発生したことがあったこと、そこで、Yは、玄関に防潮板を設置したこと、近隣にある類似のマンションでは、盛土(もりど)
傾斜のある土地を平らな土地にするために、
土砂を盛ること。をしていることが認められる。本件浸水被害は、浸水し易い状態なのに、盛土(もりど)
傾斜のある土地を平らな土地にするために、
土砂を盛ること。もしないで建築されたためであって、欠陥があるといわざるを得ない。
(ウ)上記欠陥は、売買契約の目的物の隠れたる瑕疵というのを妨げないから、Y1の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。を認め得ることが明らかである。そして、防潮板の設置では瑕疵の修補とならず、浸水被害を抜本的に防止するためには、本件マンションを取り壊し、盛土(もりど)
傾斜のある土地を平らな土地にするために、
土砂を盛ること。をした上で建物を建てるより他に方法がなく、修補不能といわざるを得ない。したがって、住居として使用するという目的を達成することが不可能であるから、Xらは、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。に基づき、本件売買契約を解除することができるというべきである。
(エ)Xらが被った損害は、本件売買代金、購入費用、修補に関する費用及び調査鑑定、弁護士費用、慰謝料である。
(3) まとめ
本件では、売買契約における引渡しから2年とする瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。特約は、売主の過失等の場合までも免除する合意とは解されないとし、Y1の主張は認めなかった。Y2に対する請求は棄却された。
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