制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:瑕疵担保責任に関するもの | トラブル事例中項目:建物の瑕疵 | トラブル事例小項目:マンション |
タイトル:裁判事例中古マンション老朽化についての説明義務
福岡高裁判決 平成12年1月28日
(判例集未登載)
《要旨》
媒介業者には給排水施設の老朽化の程度の説明義務があったとは言えないとされた事例
(1) 事案の概要
買主Xは、媒介業者Yの媒介で、平成10年1月、昭和52年築の中古マンションの一室を購入し、同年6月入居したが、入居後すぐにトイレの水漏れが発生、同年8月には台所の給水管に水漏れが発生し、修理を行った。また、同年10月には、総会で可決された汚水管修理工事が行われ、管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。より工事費用の分担金の請求を受けた。
Xは、Y及びYの従業員である宅建主任者らに対し、「給排水施設の老朽化の説明を怠った」と主張し、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。に基づく損害賠償請求を求めて提訴したが、第一審(福岡地判 平成11年8月19日)で敗訴し、控訴するに至った。
Xは、宅建業法35条1項4号にいう「飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況」の説明義務は、単なる施設の有無についての説明に限られず、本件の場合、給排水施設が修理を要する状況であったことを説明しなかったことは、Yらに重要事項の説明義務違反があると主張した。
(2) 判決の要旨
(ア)宅建業法35条1項4号にいう「飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況」についての説明義務は、これらの施設が整備されているか、整備されている施設はどのようなものかということにとどまり、これらの施設の物的状況や隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。の有無、内容は含まれないと解すべきである。
(イ)給排水施設の老朽化の程度について宅建業法35条1項に列挙した以外の重要事項として説明すべき義務があるかは、交渉経過や宅建業者の施設老朽化に対する認識等を考慮して個別具体的に判断すべきであり、本件では、Yに説明義務があったとはいえない。
(ウ)したがって、Yらが給排水施設の老朽化の程度を説明しなかったことを前提としてのYの不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。をいうXの主張は理由がない。
(3) まとめ
本件は、築20年を経過したマンションで、特段老朽化等の著しい物件ではなかったこともあり、媒介業者の責任は問われなかった。
しかし、媒介業者は、宅建業法35条に列挙された事項に限らず、買主の購入意思決定に影響を与える事項や取引物件の使用上、影響を与える恐れのある事項については、重要事項説明書等に併せて記載し、その旨を説明しておくべきである。
給排水設備は、日常生活を営む上で不可欠の設備であり、現状を正確に説明することがトラブル防止のために必要である。
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