制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
最新の情報については、
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トラブル事例大項目:瑕疵担保責任に関するもの | トラブル事例中項目:土地の瑕疵 | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例損害賠償請求は残存物の除去費用も含む
名古屋地裁判決 平成17年8月26日
(判例時報 1928号 98頁)
《要旨》
実際に除去した費用にとどまらず、残っている廃棄物の除去費用も含めて、売主に対する損害賠償請求が認容された事例
(1) 事案の概要
Xは、再開発事業に関してY1に売却した土地の代替地として、平成14年8月15日、Y1(S市)から、S市内に所在する土地を代金8,000万円余で購入した。本件土地は、同月1日、建設会社であるY2がY1に売却したもので、Y2が、本件土地上の建物(倉庫)を全部取り壊し、アスファルト舗装を実施していた。
そして、Xは、本件土地上に歯科医院を建築することにし、建設請負契約(うけおいけいやく)
家の建築工事など、当事者の一方がある
仕事を完成することを約束し、相手方が
その仕事の結果に対して報酬を支払うこ
とを約束するような契約を「請負契約」という。を締結したA社において、本件土地上に舗装されていたアスファルトを剥がしたところ、地中に陶磁器の破片等(以下「本件廃棄物」)が埋没されていることが判明した。
Xは、A社に依頼して本件廃棄物を除去し、その費用として283万円余を支払ったので、本件廃棄物が埋没されていることが売買の目的物の隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。に当たるとして、Y1に本件廃棄物全体の処理費用等合計2,310万円の損害賠償を請求し、Y2対しても、産業廃棄物を残地したまま、その上をアスファルト舗装し、産業廃棄物を隠蔽したものであり、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。責任が生じるとして、除去費用全額の2,310万円を損害として請求した。
(2) 判決の要旨
(ア)本件売買契約当時において本件廃棄物の存在はアスファルト等に隠されて容易にこれを認識できなかったことからすれば、本件廃棄物の存在が目的物の隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。に当たると認めるのが相当である。
(イ)本件廃棄物の中に本件倉庫の残骸が含まれていること及びY2において本件廃棄物の存在を知りながら、または知ることができたのにこれをY1に告げなかったことを認めるに足りる証拠もない。よって、Y2に対する請求には理由がない。
(ウ)Xが瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。に基づく損害賠償としてY1に請求し得るのは、Xが実際に除去した費用にとどまらず、本件土地に残っている廃棄物の除去費用(360万円)を含むと解するのが相当である。
(3) まとめ
本判決は、本件廃棄物の存在が目的物の隠れたる瑕疵に当たると認めるのが相当であると判断し、さらに、実際に支出した除去費用に加え、今後必要となる除去費用も損害として認めたものである。
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