制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例瑕疵担保責任と損害賠償請求権の消滅時効
最高裁判決 平成13年11月27日
(判例時報 1769号 53頁)
(判例タイムズ 1079号 195頁)
《要旨》
買主の売主に対する瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。に基づく損害賠償請求権は、目的物の引渡後10年の消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。にかかるとされた事例
(1) 事案の概要
買主Xは、昭和48年2月、土地付建物を売主業者Yから購入したが、平成5年12月頃本件宅地の売却を考え、媒介業者に調査させたところ、平成6年2月ないし3月頃、本件宅地の一部には、昭和47年10月、市から回転広場として道路位置指定がなされていたことが判明した。
これにより、本件宅地上の建物を改築等するに当たっては、床面積を大幅に縮小せざるを得ないこととなり、Xは、宅地の購入時、Yからこの事実を知らされていなかったので、隠れたる瑕疵にあたると主張し、平成7年2月、Yに対し、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。に基づく損害賠償として、約1,250万円の支払を求めて提訴した。
これに対してYは、売買契約上の権利義務自体が一般の消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。により消滅するのに、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。がそれ以上に存続すると解するのは誤りである等として、Xの損害賠償請求権は、民法167条1項の10年の消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。にかかると主張した。
第一審(浦和地判 平成9年4月25日)は、Xの請求を斥け、控訴審(東京高判 平成9年12月11日)では、時効による権利の消滅は、買主に瑕疵を発見すべき義務を負わせるに等しく、公平ではないとしてXの請求を一部認容した。
(2) 判決の要旨
(ア)瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。による損害賠償請求権は、売買契約に基づき法律上生ずる金銭支払請求権であって、これが民法167条1項債権は、十年間行使しないときは、消滅する。にいう「債権」に当たることは明らかである。買主が、引渡しを受けた後、通常の消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。期間満了までの間に、瑕疵を発見して損害賠償請求することを期待しても不合理ではない。他方、消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。の適用がないとすると、買主が瑕疵に気が付かない限り永久に損害賠償請求できることとなり、売主に過大な負担を課することとなる。
(イ)したがって、瑕疵担保による損害賠償請求権には民法167条1項の消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。の規定の適用があり、この消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。は引渡しの時から進行すると解される。
(ウ)本件におけるXの請求は、引渡しの日から21年余り経過後であったので、消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。期間が経過している。
(エ)Yによる消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。の援用(えんよう)
時効の完成によって利益を受ける者が、
時効の完成を主張すること。が権利の濫用(けんりのらんよう)
一見権利の行使とみられるが、具体的な情況や
実際の結果に照らしてそれを認めることができ
ないと判断されることをいう。例えば、加害を
目的でのみなされた権利行使は一般的に濫用とされる。に当たるとのXの再抗弁等について審理を尽くさせるため、本件を差し戻す。
(3) まとめ
本件のように、当初の契約の時点ではわからずに、転売時や建物の建替え時期に瑕疵が顕在化して紛争に発展するケースがある。契約前の重要事項説明等に十分に留意したいところである。
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