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タイトル:裁判事例競売における滞納管理費の元の所有者への求償

東京高裁判決 平成17年3月30日
(判例時報 1915号 32頁)
(金融・商事判例 1224号 51頁)

《要旨》
 競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。
によるマンションの買受人から、元の所有者に対する滞納管理費の請求が認められた事例

(1) 事案の概要
 Xは平成16年1月、Y所有のマンションを競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。
により買い受け、その所有権を取得したところ、Yは管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。
に対し、管理費、修繕積立金及び組合費を滞納していた。Xは、滞納分219万円を平成16年5月、管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。
からの請求により代位弁済したと主張して、Yに求償金の支払を求めて提訴した。
 本件競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。
手続では、現況調査報告書及び評価書には、平成15年6月現在の、Yの管理費等の滞納207万円がある旨記載され、物件明細書には管理費等の滞納分がある旨記載されていた。評価書は、上記時点の滞納分に見合う21%の減額(211万円)をし、これに基づき最低売却価格は795万円とされた。Xは競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。
に参加し、1,054万円で落札し、本件マンションの所有権を取得した。
 Yは、本件競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。
物件の物件明細書等に明示されており、競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。
の最低売却価格からも既に滞納額が控除されているから、滞納分はXが負担すべきであるなどと主張し争った。一審地方裁判所はXの請求を全部認容したので、Yが控訴した。

(2) 判決の要旨
 (ア)Yは、本件マンションの所有権がXに移転するまでの間の本件管理費について支払義務を負っている。
 (イ)建物の区分所有等に関する法律8条によれば、Xは、滞納部分について、Yの特定承継人として支払義務を負っていることは明らかである。
 これは、集合建物を円滑に維持管理するため、特定承継人に対して重畳的な債務引受人としての義務を法定したものであり、債務者たる当該区分所有者の債務とその承継人の債務とは不真正連帯債務の関係にあるものと解されるから、民法442条(連帯債務者間の求償権)は適用されないが、区分所有法8条の趣旨に照らせば、当該区分所有者と競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。
による特定承継人相互間の負担関係については、特定承継人の責任は当該区分所有者に比して二次的、補完的なものに過ぎないから、当該区分所有者がこれを全部負担すべきものであり、特定承継人には負担部分はないものと解するのが相当である。
 したがって、Xは、滞納分につき、弁済に係る全額をYに対して求償できることとなる。

(3) まとめ
 本判決では、物件明細書等の記載については、「競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。
物件の概要等を入札希望者に知らせて、買受人に不測の損害を被らせないように配慮したものに過ぎないから、上記記載を根拠として、管理費の滞納分については当然買受人たるXに支払義務があるものとすることはできない」と判示している。

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