制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
最新の情報については、
「RETIO判例検索システム」
「特定紛争案件検索システム」
「ネガティブ情報等検索サイト」(国土交通省)
「不動産のQ&A」
をご活用ください。
検索ボタンをクリックして頂くと、該当する事例の一覧が表示されます。
トラブル事例大項目:分譲マンション固有のトラブル | トラブル事例中項目:設備、管理等に関するもの | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例マンションにおけるペット飼育に関する説明義務
東京地裁判決 平成16年9月22日
(ホームページ下級裁主要判決情報)
《要旨》
ペットの飼育が可能であると誤信させて売買契約を締結させた売主業者に対する損害賠償等が棄却された事例
(1) 事案の概要
買主Xは、平成13年、売主業者Yの従業員Aから、販売中のマンションの説明を受けたり、モデルルームを見学したりしていた。その後、Yとの間で本件マンション一室の売買契約を締結した。その際、Yの取引主任者(とりひきしゅにんしゃ)
宅地建物取引主任者のこと。宅地建物取引主任者
資格試験に合格・登録し、宅地建物取引主任者証
の交付を受けた者。であるBは、Xから飼育中の犬を見せられた上で、本件マンションでペットを飼育できるか尋ねられ、この程度の犬であれば特段問題はないと思う旨述べた。Xは、Bから管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。で制定される予定の管理組合規約(かんりくみあいきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分
所有建物における区分所有者相互間の関係
を定めるための規則のこと。等及び管理委託契約書の交付を受け、それらについて承認する旨の承認書に署名捺印した。
Xは、平成14年、家族、ペットの犬とともに入居した。その後管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。においてペット飼育が問題となったため、散歩ではできる限りエレベーターに乗らない、できるだけ窓を開けない等の配慮はしていた。そこでXは、Yに対してペットの飼育に関して不適切な説明を行い、本件マンションでのペットの飼育が可能であると誤信させてその売買契約を締結させたとして、損害賠償または不当利得の返還を請求して提訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)管理組合規約(かんりくみあいきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分
所有建物における区分所有者相互間の関係
を定めるための規則のこと。等は、管理組合総会(かんりくみあいそうかい)
管理組合の最高意思決定機関であり、
区分所有法でいう「集会」のこと。によって制定・改正されるものであり、これを確定的に説明することはできないから、購入予定者に対して説明し得るのは、制定予定の管理組合規約(かんりくみあいきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分
所有建物における区分所有者相互間の関係
を定めるための規則のこと。等の内容に限られるものである。本件では、むしろ、A及びBは、ペット飼育に制約があることを説明したと認められ制定予定の管理組合規約(かんりくみあいきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分
所有建物における区分所有者相互間の関係
を定めるための規則のこと。等の内容の説明義務違反はない。
(イ)Xは、その他の購入者に対するYの相反する説明が、事実上ペット飼育を困難な状況にしたと主張するが、他の居住者が、ペット飼育に制約があることについてのYの説明で、その受取り方につき、購入者間に認識の差が生じたとしても、Yが相反する説明をしたということはできず、Xに対する不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。になると解することはできない。
(ウ)Xにとって、ペット飼育の可否は、重要な事項であったといえる。しかしながら、YがXに告げたのは、制定予定の本件管理組合規約(かんりくみあいきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分
所有建物における区分所有者相互間の関係
を定めるための規則のこと。等によれば、危害、迷惑をかける行為に該当しない場合に限りペットが飼育可能と思われるところ、制定予定の管理組合規約(かんりくみあいきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分
所有建物における区分所有者相互間の関係
を定めるための規則のこと。の内容は通常のものであり、YがXに利益になることを述べたとはいえず、消費者契約法4条2項消費者は、事業者が消費者契約の締結について
勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重
要事項について当該消費者の利益となる旨を告
げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の
不利益となる事実を故意に告げなかったことに
より、当該事実が存在しないとの誤認をし、そ
れによって当該消費者契約の申込み又はその承
諾の意思表示をしたときは、これを取り消すこ
とができる。による取消は認められない。
(3) まとめ
分譲マンションの管理をめぐるトラブルにおいて、ペットの問題は必ず上位に登場する。販売時の説明には、十分な配慮が必要といえよう。
本システムの掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、利用者が本システムの情報を用いて行う行為については本システムの制作者、運営者は何ら責任を負うものではありません。また、同種の事案について、必ず同様の結果が得られるものではありませんのでご承知おきください。なお、個別に発生したトラブル等については、管轄の行政庁等の相談窓口等にお問い合わせください。 |