制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例マンション販売と駐車場の説明義務
横浜地裁判決 平成9年4月23日
(判例時報 1629号 103頁)
《要旨》
マンションの買主らが締結した駐車場賃貸借契約が、貸主から更新を断られる事態になったこと等に関して、売主業者に説明義務違反があるとして慰謝料の請求が認められた事例
(1) 事案の概要
買主Xら(X1ら及びX2ら)は昭和60年から61年にかけて、売主業者Yから、マンションを買い受けた。
同マンションの駐車場は、敷地外の北側にAが、南側にBが設けたが、Yは、本件契約に際し、Xらに対し、駐車場はあると説明したものの、その賃貸借契約はA又はBと締結しなければならないことは説明しなかった。
また、Y作成のパンフレットには「駐車場/敷地外に20台確保」、重要事項説明書には「共用部分 駐車場等」、「標準登記簿(とうきぼ)
登記記録が記録される帳簿のこと。面積は、開発区域全域の面積より借地である駐車場面積を除いたものとなる」とあり、また、契約書には「駐車場については、第三者に専用使用権を譲渡もしくは転貸使用させることができない」とあった。
Xらは、本件駐車場の利用契約はYと締結するものと理解していたが、入居説明会の際、初めてAとBが所有者であることが判明し、結局X1らはAと、X2らはBと、駐車場の賃貸借契約を締結(昭和61年6月21日付)した。
しかし、Aは、平成6年4月、X1らに対し、同年6月をもって賃貸借契約を終了させ、更新しない旨通知し、同年7月以降X1らは駐車場の利用ができなくなった。Xらは、Yに対し、(ア)本件売買契約は駐車場付であったのに、Yの駐車場がないのは債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。であり、また、(イ)本件駐車場がAとBのものであることを説明せずに契約を締結させたことには、契約締結上の過失(けいやくていけつじょうのかしつ)
契約が成立するまでの過程で、当事者の一方
に過失があり、これによって善意無過失の相
手方に損害を与えた場合、その者は賠償責任
を負わなければならないとする法理。があるとして、損害賠償を求めた。
(2) 判決の要旨
(ア)本件売買契約においては、駐車場の継続利用をさせるという債務は契約の目的となっていないので、債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。は成立しない。
(イ)生活手段としての乗用車の重要性からすると、売主には駐車場の存否及びその利用契約締結の可否について買主に正確に説明すべき付随義務があり、説明義務に違反すれば、契約締結上の過失(けいやくていけつじょうのかしつ)
契約が成立するまでの過程で、当事者の一方
に過失があり、これによって善意無過失の相
手方に損害を与えた場合、その者は賠償責任
を負わなければならないとする法理。の問題として売主に債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。責任が生じる。Yは駐車場付か否か尋ねられたのに、A又はBとの賃貸借契約が必要なことを説明せず、説明義務違反がある。
(ウ)X1らはその後Aとの賃貸借契約の終了を通告され、当初の予想が裏切られ、またX2らは当初の予想よりも不安定になり、いずれも精神的障害を生じた。よって、Yは、X1らに対し各50万円、X2らに各20万円の慰謝料を支払え。
(3) まとめ
本件判決は、生活手段としての乗用車の重要性にかんがみ、売主業者には駐車場の存否及びその利用契約締結の可否を正確に説明すべき義務があるとしている。
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