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タイトル:裁判事例同一業者が建築したマンションによる眺望阻害

札幌地裁判決 平成16年3月31日
(ホームページ下級裁主要判決情報)

《要旨》
 同一売主業者が近接してマンションを建設したのは、信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
上の義務違反があったとして、損害賠償請求の一部が認められた事例

(1) 事案の概要
 X1、X2、X3の3名(以下「Xら」)は、分譲業者Y1が建築し、販売業者Y2が販売したマンションの13階から14階の住戸を、それぞれ平成13年3月から平成13年11月にかけて購入した。
 Y1は、本件マンションの南側約57mの距離の場所に15階建てマンション(Aマンション)を建築し、Y2がこれを販売することにし、平成14年7月に工事着工し、15階建てのAマンションが建築された。Xらは、YらにAマンション建築計画を説明すべき義務等に違反した不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。
ないし債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
上の義務違反があったと主張して提訴した。

(2) 判決の要旨
 (ア)Y1は、Aマンション建築を担当者レベルで計画したものの、具体化が進まず、Yらが本件契約時点でXらに説明義務を負っていたということはできない。
 (イ)Yらは、本件マンションを建築し、特に高層階については、その利便性とともに眺望もセールスポイントとして販売し、価格にも反映させている。そして、ここに居住するXらは、この眺望も高層階の区分建物購入の重要な動機としており、Yらもそのことは了解していたはずである。そうすると、Y1は、Xらに対し、信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
上その眺望を害しないよう配慮する義務があるといわなければならない。しかし、Y1がこうした配慮をしたと認めるに足りる証拠はない。したがって、上記義務違反による損害賠償責任を負うべきである。
 (ウ)居間からの上記眺望の障害は、経済的損失の側面があること、上下層の価格差には、眺望ばかりか、防犯、住環境等といったその他の要素も含まれていて、これは本件新マンションの建築により阻害されてはいないこと等、諸般の事情も総合考慮して、11階との価格差の半分程度の慰謝料、すなわち、X1については45万円、X2については75万円、X3については80万円をそれぞれ認めるのが相当である。

(3) まとめ
 マンション建設と眺望阻害の裁判例には、阻害を認めたリゾートマンションの事例(横浜地判平8年2月16日)と否認した一般住宅の眺望事例(大阪高判平10年11月6日)等がある。前者の事例(東側数十メートルにマンション建設)は本件と同様に同一の売主業者によるものであり、信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
上の義務違反、眺望景観相当価値の下落を損害として認めた。

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