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タイトル:裁判事例媒介契約の解除の主張と媒介報酬請求

神戸地裁判決 平成16年4月22日
(ホームページ下級裁主要判決情報)

《要旨》
 媒介業者の対応に不満を持った買主が、媒介契約の解除を主張したが、認められなかった事例

(1) 事案の概要
 Yは、平成15年6月14日、業者Xと媒介契約を締結し、売主Aから、4LDKのマンションを1600万円で購入した。
 Xの担当者Bは、当初本物件の概要をYに説明したが、Yに示した広告には、各部屋の広さを示す数値に単位が付されておらず、専有面積(せんゆうめんせき)
分譲マンションなどの区分所有建物において、
それぞれの区分所有者が単独で所有している
建物の部分のことを「専有部分」と呼び、この
専有部分の床面積が「専有面積」である。
も壁芯面積が記載されていた。また、物件案内の際にトランクルームや駐車場の場所について案内しなかった。さらに、Xが代行した銀行へのローン申込みの借入希望日欄には「平成15年7月31日」と記入されていたが、Yは、6月中に融資承認を受け、自宅の賃貸借契約の解除手続を早期に行いたいと希望していた。
 YはBに対し、銀行に対する書類送付の段取りが悪かったので融資承認が遅れてしまう、6月30日までに承認を得られなければ、媒介契約は解約すると申し出た。それに対して、Bは、融資承認は7月11日となっている、判断は銀行がすることで確約はできないと返答し、Yは、Bの態度に誠意がないとして更に不満を述べた。結局、6月30日付で融資承認はなされ、7月11日には、融資が実行されて売買代金を決済し、Yに所有権移転登記がなされた。
 Yは、媒介手数料として55万円余を、平成15年7月31日までに支払う旨約したが、媒介契約約款第17条に基づき、契約解除を主張して、支払を拒んだため、Xがその支払を求めて提訴した。

(2) 判決の要旨
 (ア)Yが根拠とする一般媒介契約約款17条の契約解除事由の規定が、相当期間を定めた催告を必要とせず、直ちに解除しうるものとした趣旨に鑑みると、その解除が認められるのは、媒介契約の性質上およそ許されない背信的行為を行った場合で、かつ、履行を催告してその結果を待つまでもなく、当該契約の目的を達成することがおよそ期待できないことが明らかな場合に限られるものと解する。
 (イ)Xが示した広告の記載は、購入者の判断を誤らせるほど著しく事実と相違するとは認めがたい。また、Bが銀行に書類を書留郵便で送付しなかった点も、結果として銀行に配達されており、個人情報が漏れた事情もない。さらに、トランクルーム等の存在も、売買契約に記載されている。これらの事情は、背信性の強いものではないことは明らかであり、Yは、これらを理由として本件媒介契約を解除することはできない。

(3) まとめ
 本件は、買主が、ローン申込みの必要書類の送付等、媒介業者の従業員の対応に不満を持ったこと等が、紛争の契機になったものと思われるが、媒介業者が、通常業務を誠実、確実に遂行することの重要性を認識させられる事例である。

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