制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例更新料支払合意と法定更新への適用の可否
京都地裁判決 平成16年5月18日
(ホームページ下級裁主要判決情報)
《要旨》
建物の賃貸借契約における更新料等を支払う旨の約定は、合意更新を前提としたもので、法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。には適用されないとした事例
(1) 事案の概要
賃貸人Xは、平成14年2月24日、賃借人Yとの間で、建物を賃貸する旨の契約を締結した。条件は、(ア)期間:同年3月1日から1年間、(イ)賃料:6万2,000円、(ウ)管理費:8,510円、(エ)更新料:新賃料の2か月分、(オ)更新手続料:1万500円であった。
Xの代理人(管理会社)Aは、平成15年2月ごろ、契約期間を平成15年3月1日から1年間などの記載のある「建物賃貸借契約継続及び改訂事項に関する覚書」という書面を送って、Yに署名・押印を求め、後に、更新料と更新手続料の支払を求めた。
これに対しYは、本件約定は、新たに合意された賃料の存在を前提にし、その2か月分を更新料として支払うことを内容とするものであるから、法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。の場合には適用されない、本件賃貸借契約は法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。されているなどとして、支払を拒絶した。XはYに対して更新料等の支払を求めて提訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)借地借家法の趣旨に照らすと、法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。の場合にも更新料を支払う旨を明確に約定している場合等合理的な理由がある場合を除いては、これを認めることは慎重であるべきである。
(イ)本件約定は、文言上は、合意更新と法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。を区別していない。しかし、法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。の場合には更新手続に費用がかかるとは通常考えられず、手数料に関するものは、合意更新が前提と認めるのが相当である。
(ウ)合意更新の場合は、期間が定められ更新されるから、期間満了までは明渡しを求められることがなく、次回更新拒絶の場合でも、更新料の支払が、正当事由(せいとうじゆう)
土地・建物の賃貸借契約において、賃貸人が
契約の更新を拒絶したり、解約の申し入れを
する際に必要とされる「事由」をいう。の存在を否定する考慮要素となる。一方、法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。の場合は、期間の定めがなく、常に解約申入れの恐れがあり、その立場は不安定になるので、賃借人にとって、更新料を支払って合意更新する一定の利益は存することになる。
(エ)この点を考慮すると、合意更新と法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。とで、更新料の支払の要否について差が生じても、賃借人間で不公平が生じるとは言い難く、むしろ、法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。についても更新料の支払を要するとすることの方が、合理性は少ないというべきである。本件更新約定は、合意更新を前提としたものであり、法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。には適用されないとするのが契約当事者の合理的な意思に合致すると認められる。
(3) まとめ
本件は、建物の賃貸借契約において、約定で更新時に更新料の支払をするとしたものの、それが合意更新のみならず、法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。も含むものなのかがはっきりせず、争いになったのもであり、法定更新(ほうていこうしん)
期間の定めのある建物の賃貸借において、
当事者が期間の満了の1年前から6月前ま
での間に更新をしない旨の通知または条件
を変更しなければ更新をしない旨の通知を
しなかったときは、従前の契約と同一の条
件で契約を更新したものとみなす
(借地借家法26条1項)。についても更新料の支払を要することは、借地借家法に照らしても合理性が少ないとした事例である。
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