制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
最新の情報については、
「RETIO判例検索システム」
「特定紛争案件検索システム」
「ネガティブ情報等検索サイト」(国土交通省)
「不動産のQ&A」
をご活用ください。
検索ボタンをクリックして頂くと、該当する事例の一覧が表示されます。
トラブル事例大項目:土地建物の賃貸借契約に関するもの (原状回復を除く) |
トラブル事例中項目:管理等に関するもの | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例賃貸人の自力救済に対する賃借人の損害賠償請求
東京地裁判決 平成16年6月2日
(判例時報 1899号 128頁)
《要旨》
賃借人の賃料不払を理由に建物の鍵を交換した賃貸人の行為は、違法な自力救済(じりききゅうさい)
司法手続によらず、自力でその権利を実行することをいう。として不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。が成立するとしたものの、賃借人に損害が生じたとはいえないとされた事例
(1) 事案の概要
室内装飾品類の販売等を営む法人Xは、平成10年10月、賃貸人Yとの間で建物賃貸借契約を結び、その建物を事務所兼倉庫として使用していた。
しかし、Xは資金繰りが悪化し、平成11年3月及び4月分の賃料支払を遅延したうえ、Xの実質的な経営者Aが同年4月に、刑事事件で逮捕拘留されたため、業務の運営が困難になり、5月分以降の賃料を一切支払わず、その支払の目処も立たない状況に陥ってしまった。
そこでYは、平成11年6月、Xに対して、未払賃料等合計298万円余の支払がなされない場合には賃貸借契約を解除する旨の意思表示をするとともに、その場合には本件建物の鍵を交換する旨通知したが、Xからの入金は期限までに実行されなかった。Yは本件賃貸借契約が解除されたという前提のもとに、この建物に赴き、居合わせた、Bの従業員の立会いのもとに、鍵の交換を行った。
そのためXは、Yが鍵を交換した行為は違法な自力救済(じりききゅうさい)
司法手続によらず、自力でその権利を実行することをいう。であり、これによって営業ができなくなったとして、債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。又は不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。に基づき合計3,110万円余の損害賠償を求めて提訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)本件賃貸借契約は、契約解除通知および期限の経過によって、Xの債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。を理由とする解除により終了したものと認められる。
(イ)本件鍵交換の予告はされていたものの、建物内の動産類の持出しの機会を与えることなく、Xが、事前事後において、承諾ないし容認したものとは認められないことからすると、本件鍵交換は未払賃料債権等の履行を促すために行われた、Xの占有権を侵害する自力救済(じりききゅうさい)
司法手続によらず、自力でその権利を実行することをいう。に当たり、緊急やむを得ない事情は認められず、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。が成立するものと認められる。
(ウ)Xは、本件鍵交換によって、本件建物内に立ち入ることが困難となり、業務を遂行することが困難となったことが認められるが、本件鍵交換当時、Xが、逸失利益(いっしつりえき)
損害賠償で請求することのできる損失の1つで、
本来得られるべきであるにもかかわらず得られな
かった利益をいう。等の請求の前提となる正常な業務を遂行していたものと認めるのは困難である。
(エ)したがって、Xの占有権を侵害する不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。に該当する本件鍵交換によって逸失利益(いっしつりえき)
損害賠償で請求することのできる損失の1つで、
本来得られるべきであるにもかかわらず得られな
かった利益をいう。相当の損害が発生したとするXの主張は採用できない。
(3) まとめ
本件では、賃貸人の賃貸借契約終了後の鍵交換行為について、「私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が損する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許される」との最判昭40・12・7の示した一般的基準を引用して、違法な自力救済(じりききゅうさい)
司法手続によらず、自力でその権利を実行することをいう。であると判断している。
本システムの掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、利用者が本システムの情報を用いて行う行為については本システムの制作者、運営者は何ら責任を負うものではありません。また、同種の事案について、必ず同様の結果が得られるものではありませんのでご承知おきください。なお、個別に発生したトラブル等については、管轄の行政庁等の相談窓口等にお問い合わせください。 |