トラブル事例大項目:土地建物の賃貸借契約に関するもの
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タイトル:裁判事例いわゆるオーダーメイド賃貸借と賃料減額請求権

最高裁判決 平成17年3月10日
(判例時報 1894号 14頁)
(判例タイムズ 1179号 185頁)

《要旨》
 重要な事情を参酌しないまま、賃借人がした賃料減額請求の行使を否定した原審の判断は、借地借家法の解釈適用を誤ったものであるとされた事例

(1) 事案の概要
 スーパーを経営するXは、Yの所有地上にX要望の建物をYに建築してもらい、長期間賃借することを計画し、計1億6千万円を建設協力金として無利息で預託した。平成6年7月、大型スーパーストアの店舗として使用する目的の建物が完成した。この建物の他用途への転用は困難である。
 Yは、(ア)賃貸借期間は20年、(イ)賃料月額649万円、(ウ)賃料は3年毎改定、初回は7%増額、その後は最低5%以上の増額とし、7%以上をめどに協議の上定める等の約定で、建物及び駐車場を賃貸した。
 Xは、平成9年8月、賃料を649万円余に据え置くべき旨、平成12年10月、555万円余に減額すべき旨の意思表示したところ、Xは賃料は増額改定されたとして未払賃料等の支払をYに求めた。
 原審は、本件は、共同事業の一環であることなどを考察すると、借地借家法が想定している賃貸借契約の形態とは大きく趣きを異にする。賃料減額請求権の行使が認められるかどうかについては、その特殊性を踏まえた上で、賃借人の経営状態に照らして当初の合意を維持することが著しく合理性を欠く状態となるような特段の事情があるかどうかによって判断するのが相当である。本件土地の公租公課は上昇していること、Xは順調に業績を伸ばしていることが認められ、賃料を減額すべき事由を見出すことは困難であるとした。

(2) 判決の要旨
 (ア)借地借家法32条1項の規定は、強行法規(きょうこうほうき)
法律の規定のうち、当事者がそれと異なる。
であり、賃料自動改定特約等の特約によってその適用を排除することはできないものである。そして、同項の規定に基づく賃料減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては、同項所定の諸事情のほか、当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきである(最判平15.6.12、平15.10.21、平15.10.23等)。
 (イ)本件賃貸借契約の基本的内容は、通常の建物賃貸借契約と異なるものではないから、賃料減額請求の当否を判断するに当たっては、諸般の事情を総合的に考慮すべきであり、賃借人の経営状態など特定の要素を基にした上で、独自の基準を設けてこれを判断することは許されないというべきである。
 (ウ)原審判決は、土地建物価格の変動、近傍同種建物の賃料相場等、総合考慮すべき他の重要な事情を参酌しないまま、賃料減額請求権の行使を否定したものであって、その判断は借地借家法の解釈適用を誤ったものというべきで、破棄を免れない。

(3) まとめ
 本件は、賃貸人が賃借人の営業に適した建物を建築して賃貸する、いわゆるオーダーメイド賃貸に関して、従来のサブリース元来は、賃借人がさらに第三者に賃貸(転貸)
すること。不動産取引の場合、賃貸住宅のオー
ナーから管理会社等が一括して借り上げ、賃貸
経営を行う方式を指す。
事件の最判を引用し、同様の考え方を示したものである。

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