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タイトル:裁判事例サブリース契約における賃料減額請求権

最高裁判決 平成15年10月21日
(判例時報 1844号 37頁)
(判例タイムズ 1140号 68頁)

《要旨》
 サブリース元来は、賃借人がさらに第三者に賃貸(転貸)
すること。不動産取引の場合、賃貸住宅のオー
ナーから管理会社等が一括して借り上げ、賃貸
経営を行う方式を指す。
契約において、賃料減額請求権は認められるが、賃料額決定の重要な要素となった事情等を十分に考慮すべきであるとされた事例

(1) 事案の概要
 不動産賃貸業者Xと不動産会社Yは、Xが建築したビルにつき、Yが転貸事業を営むために賃借する賃貸借契約(サブリース元来は、賃借人がさらに第三者に賃貸(転貸)
すること。不動産取引の場合、賃貸住宅のオー
ナーから管理会社等が一括して借り上げ、賃貸
経営を行う方式を指す。
契約)を締結した。本件契約には、初年度賃料を年額19億7,740万円、3年ごとに直前賃料の10%相当額を値上げする等の条項(自動増額特約)が規定されていた。その後Yは、4回にわたり賃料を減額する旨の意思表示を行い、Xに対して約定賃料より減額した賃料を支払った。
 これに対してXは賃料は約定に基づき増額されているとしてYに対して不足分の支払を求め、Yは借地借家法32条1項により賃料は減額されていると争った。
 第二審は、サブリース元来は、賃借人がさらに第三者に賃貸(転貸)
すること。不動産取引の場合、賃貸住宅のオー
ナーから管理会社等が一括して借り上げ、賃貸
経営を行う方式を指す。
契約は借地借家法が全面的に適用されるのは相当ではないとしつつ、Xの請求を一部認容した。これに対し、Xは上告した。

(2) 判決の要旨
 (ア)本件契約は、建物の賃貸借契約であることが明らかであり、借地借家法32条の規定が適用されるものというべきである。
 (イ)本件契約には自動増額特約が存するが、借地借家法32条1項の規定は強行規定であるので、本件契約の当事者は、自動増額特約が存するとしても、そのことにより直ちに借地借家法32条1項に基づく賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない。
 (ウ)本件契約はYの転貸事業の一部を構成するものであり、賃料額及び自動増額特約は、XがYの転貸事業のために多額の資本を投下する前提になったものであって当初賃料額を決定する際の重要な要素であった。したがって、借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求の当否及び相当賃料額を判断する場合に、重要な事情として十分に考慮されるべきである。
 (エ)以上のとおり、減額請求の当否及び相当賃料額を判断するにあたっては、賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきである。原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるので破棄を免れず、また、賃料減額請求の当否について更に審理を尽くさせるために原審に差し戻す。

(3) まとめ
 本判決は、いわゆるサブリース元来は、賃借人がさらに第三者に賃貸(転貸)
すること。不動産取引の場合、賃貸住宅のオー
ナーから管理会社等が一括して借り上げ、賃貸
経営を行う方式を指す。
契約と称される本件契約について、建物の賃貸借契約であるとして借地借家法32条1項による借主側の減額請求権を認める一方で、その減額請求を判断する場合には、本件サブリース元来は、賃借人がさらに第三者に賃貸(転貸)
すること。不動産取引の場合、賃貸住宅のオー
ナーから管理会社等が一括して借り上げ、賃貸
経営を行う方式を指す。
契約の賃料額を決定する際の重要な要素となった事情を、衡平の見地に照らし、十分に考慮すべきであるとして貸主側への配慮も示したものである。

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