制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例隣接建物による日照被害と損害賠償請求
大阪地裁判決 平成17年9月29日
(判例時報 1929号 77頁)
(判例タイムズ 1194号 216号)
《要旨》
日照侵害の程度は、社会通念に照らして受忍限度を超えるとは認め難く、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。を構成するものではないとして、損害賠償請求が棄却された事例
(1) 事案の概要
Xは、マンションの1階の102号室を、平成12年10月に購入し、妻および子供1人と居住している。一方、Yは、当該マンションの南側の敷地に、昭和42年築の木造瓦葺2階建の建物を取り壊し、平成16年2月、家族向けアパート(本件建物)を建築した。
Xは、Yのアパート建築により、冬季には全く日照を享受することができず、日照権を違法に侵害されたとして、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。に基づき、慰謝料等270万円余の支払いを求めた。これに対して、Yは、建築基準法等に違反していない上、Xはあえて1階を購入しているものであり、また、日照妨害の程度は軽微で、受忍限度を超えるものではないなどとした。
(2) 判決の要旨
(ア)Xは、X所有建物部分に対する従前の日照の利益を享受できなくなった侵害行為を受けたものということができる。
(イ)しかし、もともとX所有建物部分が享受していた冬季における日照の程度は2時間であり、しかも、X所有建物全体に対する日照ではないことから、その利益を過大評価できず、むしろ、ごくささやかな程度であったと評価せざるを得ない。
(ウ)また、Xは、本件マンションの1階部分の日当たりが悪いものであることを承知で、本件マンションの2階部分ではなく、1階部分を購入したものであり、日照がかなり制限されていることを認識・認容していた。また、早晩、従前建物の外観からして従前建物の建て替えがあることも予測の範囲内であったというべきである。さらに、Yも、本件建物の建築が、従前と比較して著しい侵害となるとは認識していなかったといわざるを得ない。
(エ)本件建物は、既に、境界線から1.2メートル後退して建築されているものであって、また、Yが法的規制を遵守しながら、なお採算性を考慮することも当然に許されるべきであるから、Yに対して、更に1.1メートル後退して本件建物を建築することまで求めるのは、過分な要求といわざるを得ない。さらに、本件建物が第一種中高層住居専用地域中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護
するため定める地域(都市計画法9条)。の日影規制(にちえいきせい)
建築物に対する斜線制限の一つで、日影の
量を一定以下にするよう建築物の高さを制
限することをいう。を受けないものである上、仮にその日影規制(にちえいきせい)
建築物に対する斜線制限の一つで、日影の
量を一定以下にするよう建築物の高さを制
限することをいう。を受けると仮定した場合でも、その日影規制(にちえいきせい)
建築物に対する斜線制限の一つで、日影の
量を一定以下にするよう建築物の高さを制
限することをいう。の範囲内の建物であること等をも考慮すれば、本件建物の建築については、特別に問題となるべき事情を認めることはできない。
(オ)以上を総合考慮すると、日照が侵害されたとしても、これは社会通念に照らしてXの受忍限度を超えるものとは認め難いから、Yの不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。を構成するものではないと評価するのが相当である。
(3) まとめ
本件では、日照侵害は認めながら、建築基準法違反、日照被害の程度、地域性等を考慮し、受忍限度は超えていないとされた。
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