トラブル事例大項目:その他 トラブル事例中項目:その他 トラブル事例小項目:

タイトル:裁判事例国有財産及び県有財産である隣地の時効取得

さいたま地裁判決 平成17年6月8日
(判例自治 275号 55頁)

《要旨》
 国有財産及び県有財産である隣接地について、取得時効(しゅとくじこう)
一定期間、所有の意思をもって、他人の物を占有
したとき、その物の所有権などの権利を、取得す
ることができる(民法162条)。このように占有と
いう事実状態が継続することにより、権利を取得
できる時効を取得時効という。
を原因とする所有権の確認を求めた事案において、取得時効(しゅとくじこう)
一定期間、所有の意思をもって、他人の物を占有
したとき、その物の所有権などの権利を、取得す
ることができる(民法162条)。このように占有と
いう事実状態が継続することにより、権利を取得
できる時効を取得時効という。
は成立しないとされた事例

(1) 事案の概要
 Xは、国有財産及び県有財産である土地につき、昭和62年から63年にかけて売買により自ら取得した土地に含まれているものと認識して、一体として整地し、倉庫、事務所、駐車場等として賃貸していた。
 平成2年、Xは、建物の建築確認申請に際して、県有財産である土地との境界が不明確との指摘を受けたため、県に対し、境界確認申請を行ったが合意に至らなかったため、国有財産及び県有財産である土地について訴訟を提起し、時効取得を援用(えんよう)
時効の完成によって利益を受ける者が、
時効の完成を主張すること。
する旨の意思表示をした。

(2) 判決の要旨
 (ア)時効取得に際しての平穏・公然性については、Xは売買で取得した土地とともに「国公有地」も一体として占有してきたものであり、この占有は自主占有であって平穏・公然性も否定されない。
 (イ)時効取得に必要な民法186条1項の「善意・無過失」とは、自己に所有権があるものと信じ、かつ、そのように信じることに過失がないことををいう。一般的に土地取引に当たって、登記簿(とうきぼ)
登記記録が記録される帳簿のこと。
公図(こうず)
登記所が保管している土地台帳付属地図の
一般的呼称。公図は、各筆の土地の位置、
形状、地番を公証するものとして事実上重
要な機能を有しており、道路付きや隣地境
界の関係を知る手立てにもなるが、必ずし
も現地を正しく反映していないものがある。
を確認し、実測するなりして実地に調査すれば本件係争地が含まれないことを容易に知り得たこと、本件係争地の公図(こうず)
登記所が保管している土地台帳付属地図の
一般的呼称。公図は、各筆の土地の位置、
形状、地番を公証するものとして事実上重
要な機能を有しており、道路付きや隣地境
界の関係を知る手立てにもなるが、必ずし
も現地を正しく反映していないものがある。
をみれば、国有財産の所在することが一目瞭然であったことから、本件では占有開始に当たって悪意であったか少なくとも過失があった。
 (ウ)長期取得時効(しゅとくじこう)
一定期間、所有の意思をもって、他人の物を占有
したとき、その物の所有権などの権利を、取得す
ることができる(民法162条)。このように占有と
いう事実状態が継続することにより、権利を取得
できる時効を取得時効という。
については、Xによる占有が20年に満たないため、長期取得時効(しゅとくじこう)
一定期間、所有の意思をもって、他人の物を占有
したとき、その物の所有権などの権利を、取得す
ることができる(民法162条)。このように占有と
いう事実状態が継続することにより、権利を取得
できる時効を取得時効という。
は成立しない。また、黙示の公用廃止があったかについては、Xによる造成によって公共用地としての機能が喪失したものであって、占有開始時から機能を失ったものではなく、黙示の効用廃止は認められない。
 (エ)したがって、Xの取得時効(しゅとくじこう)
一定期間、所有の意思をもって、他人の物を占有
したとき、その物の所有権などの権利を、取得す
ることができる(民法162条)。このように占有と
いう事実状態が継続することにより、権利を取得
できる時効を取得時効という。
の成立する余地はないというべきである。

(3) まとめ
 取引対象土地に、青地(あおち)
公図に青く塗られた部分のこと、国有地である
水路や河川敷を示すものである。
とか赤地(あかち)
公図に赤く塗られた部分のこと、
国有地である道路を示すものである。
等の法定外効用物が存在する場合がある。このような場合において払下げを受けるには、所定の手続きが必要になることから、取引に関与する宅建業者は、その存在の確認調査はもとより、存在する場合には、事前に関係官庁、所管窓口に具体的な手続方法、その見通し等について、十分な調査・確認を行い、その内容を重要事項として説明する必要がある。

本システムの掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、利用者が本システムの情報を用いて行う行為については本システムの制作者、運営者は何ら責任を負うものではありません。また、同種の事案について、必ず同様の結果が得られるものではありませんのでご承知おきください。なお、個別に発生したトラブル等については、管轄の行政庁等の相談窓口等にお問い合わせください。