トラブル事例大項目:重要事項説明に関するもの トラブル事例中項目:都市計画等の法令上の制限 トラブル事例小項目:

タイトル:特定紛争都市計画道路の計画線誤表示をめぐるトラブル

《要旨》
 売主業者から説明を受けていた都市計画道路の計画線の位置が実際よりも敷地の内側にズレていたため、買主が賠償金を請求したもの。解決金60万円で和解成立。

(1) 事案の概要
 買主Xは、平成17年12月に売主業者Yから、A市所在の中古建物付の雑種地(約149坪)を5,940万円で購入した。本物件を含む敷地については、昭和47年4月に県の都市計画道路の計画決定がなされているが、XはYから契約締結前に、当該道路計画に含まれる本物件の敷地部分は約11坪である旨告げられていた。
 しかし、Xが平成18年2月に市の都市計画課で平面図を入手して確認したところ、実際の都市計画線の位置はYからもらった図面と比べると、敷地の内側部分に位置しており、当該道路計画に含まれる本物件の敷地部分は約45坪になることが判明した。
 この点について、Yは、本件契約締結前の平成17年11月に市の道路課において広域図面を閲覧した上でXに対して説明したものであると主張した。しかし、Xが市役所に行って確認したところ、道路課では未着工道路の図面を閲覧には供していないこと、さらに、都市計画課で平成18年2月に入手した平面図は平成17年12月時点においても閲覧に供していたことの証言を得た。
 Xとしては、将来、当該道路計画の実施決定がなされれば、当該道路計画に含まれる敷地部分(45坪)が収用される損害を被ることから、当該敷地部分買取額に相当する金額を損害賠償として要求した。これに対してYは、買取りならば考えられるが損害賠償請求には応じられないとして紛争となった。

(2) 事案の経過
 委員3名により5回の調整を行った。調整の過程でXは、道路計画線の表示が間違っていたことに対する金銭的な賠償を要求したが、金額は45坪の買取額に相当する金額ではなく、将来収用で削られる面積によって被る土地の価値の減価に対する一定の金銭的賠償であると主張した。
 これに対してYは、道路計画線についての調査が不十分であったこと、対象面積の計算が大雑把過ぎた点などの重要事項説明上の問題は認めたが、調整区域内で都市計画道路にかかる物件を利殖的に購入する買手もおり、将来道路が出来れば(値上りで)買主は得をするという認識だったと主張した。

(3)和解の内容
 委員からYに対して、本件が瑕疵問題の損害賠償事案として検討すべきであり、損害額の算定自体は難しいものの法律上は損害であることを説明した。さらに、類似の判決例を引用して裁判でも損害があると判断され、金額算定根拠については、鑑定評価における阻害率による減価額であることを示し、一定の解決金支払の検討を促したところ、Yは分割で100万円、一括ならば60万円支払う旨申し出た。差額に合理性は乏しいが、Xも早期決着の強い意向を示したため、一括支払条件での解決金60万円で和解が成立した。

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