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タイトル:裁判事例専有部分の用途違反に対する使用禁止請求

東京地裁判決 平成17年6月23日
(判例タイムズ 1205号 207頁)

《要旨》
 マンション管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。
が、管理規約(かんりきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分所有建物における区分所有者相互間の関係を定めるための規則のこと。
違反を理由に専有部分(せんゆうぶぶん)
区分所有建物において、それぞれの区分所有者
が単独で所有している建物の部分のこと。分譲マンションの場合でいえば、各住戸の内部
がこれに該当する。
の使用禁止を求めた事案において、当該使用禁止請求は権利の濫用(けんりのらんよう)
一見権利の行使とみられるが、具体的な情況や
実際の結果に照らしてそれを認めることができ
ないと判断されることをいう。例えば、加害を
目的でのみなされた権利行使は一般的に濫用とされる。
にあたるとして棄却された事例

(1) 事案の概要
 Y1は、相続により取得した本件マンションの一室を、平成13年10月、Y2に対して賃貸し、Y2は本件居室にてカイロプラクティック治療院を開設した。
 本件マンションの管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。
Xは、本件マンションの管理規約(かんりきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分所有建物における区分所有者相互間の関係を定めるための規則のこと。
には「区分所有者は、その専有部分(せんゆうぶぶん)
区分所有建物において、それぞれの区分所有者
が単独で所有している建物の部分のこと。分譲マンションの場合でいえば、各住戸の内部
がこれに該当する。
につき住宅部分は住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と定めているところ、住宅部分である本件居室をY2は治療院経営を目的として賃借しており管理規約(かんりきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分所有建物における区分所有者相互間の関係を定めるための規則のこと。
に違反していると等主張し、Y1及びY2(以下「Yら」)に対し本件居室の使用禁止を求めた。
 これに対しYらは、本件マンションの管理規約(かんりきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分所有建物における区分所有者相互間の関係を定めるための規則のこと。
には、住宅部分と事務所部分の区別があるものの、実際にはその区別は曖昧であり管理規約(かんりきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分所有建物における区分所有者相互間の関係を定めるための規則のこと。
違反はないこと、住宅部分の大部分は事務所として使用されているが、Y2に対するものと同様の注意や警告がされたことはなく、したがって、Xが他のテナントの用途違反を放置しつつ、Yらのみに対して、その居室の使用禁止を請求することは権利の濫用(けんりのらんよう)
一見権利の行使とみられるが、具体的な情況や
実際の結果に照らしてそれを認めることができ
ないと判断されることをいう。例えば、加害を
目的でのみなされた権利行使は一般的に濫用とされる。
にあたると主張した。

(2) 判決の要旨
 (ア)Y2の使用は「住戸使用」には含まれず、管理規約(かんりきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分所有建物における区分所有者相互間の関係を定めるための規則のこと。
に違反する。
 (イ)本件マンションのようないわゆる複合マンションにおいては、使用態様に関する管理規約(かんりきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分所有建物における区分所有者相互間の関係を定めるための規則のこと。
を遵守しなければ居住者の良好な環境を維持することはできなくなるところ、Y2の使用態様は事務所よりも平穏さを損なう恐れが高く、区分所有法57条1項の「建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」であるといわざるを得ない。
 (ウ)しかし、Xが住宅部分を事務所として使用している大多数の用途違反を長期間放置し、かつ現在まで何らの警告も発しないでおきながら、他方で、事務所と治療院とは使用態様が多少異なるとはいえ、特に合理的な理由もなく、しかも多数の用途違反を行っている区分所有者の賛成により、Yらに対して、治療院としての使用の禁止を求めるXの行為はクリーンハンズの原則「汚れのない手」の原則、自ら法を尊重する
ものだけが法の尊重を要求することができる
というもの。
に反し、権利の濫用(けんりのらんよう)
一見権利の行使とみられるが、具体的な情況や
実際の結果に照らしてそれを認めることができ
ないと判断されることをいう。例えば、加害を
目的でのみなされた権利行使は一般的に濫用とされる。
であるといわざるを得ない。
 (エ)以上によれば、Xの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする。

(3) まとめ
 都市部ではいわゆる複合マンションが多く見られるが、本事例のような紛争を避けるためには、隣室の利用状況からのみ判断するのではなく、管理規約(かんりきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分所有建物における区分所有者相互間の関係を定めるための規則のこと。
等を十分確認することが必要である。本件は、住戸専用部分の使用態様を理由にその使用禁止請求が権利の濫用(けんりのらんよう)
一見権利の行使とみられるが、具体的な情況や
実際の結果に照らしてそれを認めることができ
ないと判断されることをいう。例えば、加害を
目的でのみなされた権利行使は一般的に濫用とされる。
に当たるとして棄却された事例であるが、管理規約(かんりきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分所有建物における区分所有者相互間の関係を定めるための規則のこと。
の作成・改正時においても参考になる事例と思われる。

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