制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例マンション管理費等の消滅時効
最高裁判決 平成16年4月23日
(判例時報 1861号 147頁)
(判例タイムズ 1152号 147頁)
《要旨》
マンション管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。が請求した前所有者の延滞管理費等について、5年を経過した部分は時効により消滅しているとされた事例
(1) 事案の概要
Xは、平成10年3月、法人であるBから本件マンションの一室を購入したが、Bは、平成4年1月分から平成10年4月分までの管理費等を滞納しており、その合計額は173万円余である。
本件マンションの管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。であるYは、本件管理費等の支払義務はXに承継されたとして、平成12年12月、Xに対し支払を求めたが、Xは、本件管理費等の債権は民法169条年又はこれより短い時期によって定めた金銭その
他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使し
ないときは、消滅する。所定の債権に該当し、同条所定の5年間の短期消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。により消滅する旨主張して、本件管理費等のうち支払期限から5年を経過した平成7年12月分までの合計104万円余につき消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。を援用(えんよう)
時効の完成によって利益を受ける者が、
時効の完成を主張すること。した。
原審は、Xの上記消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。の抗弁を排斥して、Yの請求を認容すべきものとしたため、Xが上告した。
(2) 判決の要旨
(ア)本件の管理費等の債権は、管理規約(かんりきやく)
区分所有法にもとづいて設定される、区分所有建物における区分所有者相互間の関係を定めるための規則のこと。の規定に基づいて、区分所有者に対して発生するものであり、その具体的な額は総会の決議によって確定し、月ごとに所定の方法で支払われるものである。このような本件の管理費等の債権は、基本権たる定期金債権から派生する支分権として、民法169条年又はこれより短い時期によって定めた金銭その
他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使し
ないときは、消滅する。所定の債権に当たるものというべきである。その具体的な額が共用部分等の管理に要する費用の増減に伴い、総会の決議により増減することがあるとしても、そのことは、上記結論を左右するものではない。
(イ)そうすると、本件管理費等のうち平成4年1月分から平成7年12月分までの合計104万円余については、消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。が完成していることになるから、Yの請求は、上記時効完成分を除いた69万円余及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきである。
(3) まとめ
マンションの管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。にとって、管理費の延滞は従来から深刻な問題と考えられているが、本判決はその消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。という議論について5年間として結論を出したものである。管理組合(かんりくみあい)
分譲マンションなどの区分所有建物において
、区分所有者が建物および敷地等の管理を行
なうために区分所有法にもとづいて結成する
団体のこと。にとっては、時効の完成により債権が回収不可能になることは区分所有者に新たな負担となる可能性があり、時効の中断をより厳格に管理しつつ、滞納者に対することが求められよう。なお、本判決には次のような補足意見が付けられている。
修繕積立金は、区分所有建物の資産価値を維持保全するためのものであり、究極的には個々の区分所有者の利益に還元されるのであり、また、区分所有関係を維持していくために必要不可欠の負担ということもできる。修繕積立金のこのような性質にかんがみると、短期消滅時効(しょうめつじこう)
一定期間、権利を行使しないという事実状態
が継続することにより、債権などの権利が
消滅するという時効。の適用により、不誠実な一部の滞納者がその納付義務を容易に免れる結果とならないようにするための適切な方策が、立法措置を含め十分に検討されるべきものと考える。
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