制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:分譲マンション固有のトラブル | トラブル事例中項目:眺望等 | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例高層マンションと眺望権の侵害
大阪地裁判決 平成11年12月24日
(判例集未登載)
《要旨》
都市部の高層マンションの購入者が、隣地に売主業者が中高層マンションを建築したため、眺望の利益を侵害されたとして、損害賠償を請求したが棄却された事例
(1) 事案の概要
業者Yは、大阪市に所在するA社(Yの親会社)所有地を買い受け、高層マンション郡を建設分譲する大規模開発事業を行った。本件地域は、大阪市の中心地からも交通至便の土地で、準工業地域内、高度利用の必要性の高い地域であった。Yは、平成元年、Xらに、O棟(15階建)の2~8階部分の住戸を分譲した。
O棟の東側は、A所有地で、テニスクラブの建物があった。Aは、平成7年3月、決算対策のため、本件隣地をBに売却し、Yは平成8年3月Bから本件隣地を購入して、平成9年6月マンション2棟(8階建ないし14階建)を建設した。
Xらは、平成10年、Yに対し、同マンション2棟の建設により眺望を阻害され、圧迫感を与えられて、財産的及び精神的損害を被ったとして、総額2,872万円の損害賠償請求訴訟を提起した。
Xらは、Yの建設により、眺望を著しく阻害され、損害を受けたと主張し、Yは、Xらには法的保護に値する眺望の利益はないと主張して争った。
(2) 判決の要旨
(ア)法的に保護される眺望権の侵害についての判断は、当該侵害行為の性質態様、行為の必要性と相当性、行為者の意図目的、加害回避の有無等と、他方被害利益の価値ないし重要性、被害の程度範囲、侵害の予測可能性等を勘案して決定するべきである。
(イ)本件地域は、土地の高度利用の必要性の強い地域で、すでに中高層の建物が相当数建築されており、また、Yは分譲の際眺望の良さを宣伝材料としておらず、重要事項説明では分譲時の周辺の環境が変化し得ることを予定していたから、分譲時の眺望が維持されることが保証されていたとはいえず、分譲時の眺望が本質的不可欠な経済的価値を担っていたとはいえない。
(ウ)加えて、本件建物は約33m離れており、かつ、建築基準法等の関係法令に適合した適法な建築物である。
(エ)本件建物建設により、Xらの一部の住戸から都島の町並みや生駒山系が眺望できなくなった(もっとも、それは、天候が良く、空気が澄んでいるときに、遠景でかすかに見える程度である)としても、その眺望の悪化の程度が社会通念上一般に受忍すべき限度を超え、法的に保護されるべき利益を不当に侵害したとは認められない。
(オ)圧迫感による被害やプライバシー侵害による被害も認められない。
(3) まとめ
本件事案は、売主業者が眺望を売り物にせず、また、買主の主張する眺望の利益も、「天候が良く、空気が澄んでいるときに、遠景でかすかに見える程度」であり、その立地は、土地の高度利用の必要性の強い地域であったので、法的に保護されるべき眺望利益とはいえないとされた。
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