制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:媒介契約と報酬請求に関するもの | トラブル事例中項目:媒介契約と報酬請求 | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例当初の媒介業者を外して成約した取引と報酬請求権
東京高裁判決 平成10年9月30日
(判例タイムズ 1024号 220頁)
《要旨》
媒介業者が紹介した購入希望者との取引が不成立となった後に、別の業者の媒介により同じ当事者間で成約した事案において、当初の媒介業者の報酬請求権を認めなかった事例
(1) 事案の概要
売主Y1は、平成6年5月、媒介業者Xとの間でY1所有地の売却について専任媒介契約(せんにんばいかいけいやく)
媒介契約の一形式で、依頼者が他の宅建業者に
重ねて媒介を依頼することが禁止されている契約のこと。 を締結した。本件専任媒介契約(せんにんばいかいけいやく)
媒介契約の一形式で、依頼者が他の宅建業者に
重ねて媒介を依頼することが禁止されている契約のこと。 には、依頼者の直接取引(ちょくせつとりひき)
宅建業者に媒介を依頼した者が、その宅建業者
の紹介によって知った相手方と、宅建業者を排除
して直接目的物件の売買または交換の契約を締結
すること。に関する特約(媒介契約の有効期間の満了後2年以内にY1がXの紹介によって知った相手方とXを排除して目的物件の売買又は交換の契約をしたときは、Xは、Y1に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができる。)が付されていた。
一方Y1の土地の隣地所有者Y2(Y1の親族等)も、他の媒介業者との間で自己所有地の売却につき一般媒介契約書(ばいかいけいやくしょ)
宅建業者は、媒介契約を締結したときは、遅滞なく、
一定の事項を記載した書面を作成し、
依頼者(売主・買主・貸主・借主)に交付しなければならない。
この書面を「媒介契約書」と呼んでいる(宅建業法第34条の2第1項)
。媒介契約書に記載されるべき事項は詳細に法定されている。
を締結していた。
Aは、本件土地を知り、隣地Y2の土地と併せて購入しようとして、Xを通じて、Y1及びY2の紹介を受けた。しかし、AとY2との前払金についての契約条件が折り合わず、Yら(Y1及びY2)はAに対する売却を断わり、XはAへの媒介を断念した。
その後Aは、新たに土地を探すためにBに媒介を依頼した。BはYらに売却意思を確認したところ、Y2が売却方針を変更していたためAへの売却に応じ、同年12月、YらとAとの間で各土地の売買契約を締結した。
Xは、Yらは故意にXの媒介による契約締結を妨害したものであり、また、本件専任媒介契約(せんにんばいかいけいやく)
媒介契約の一形式で、依頼者が他の宅建業者に
重ねて媒介を依頼することが禁止されている契約のこと。 の特約により報酬請求権がある等と主張して、媒介手数料等の支払を求めて提訴した。原審は、Xの請求を一部認容し、Y1はこれを不服として控訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)AとYらとのXの媒介は、遅くともAに対する売却が拒絶された時点で終了し、かつ、 XY1間の専任媒介契約(せんにんばいかいけいやく)
媒介契約の一形式で、依頼者が他の宅建業者に
重ねて媒介を依頼することが禁止されている契約のこと。 は、3か月の有効期間の経過後は失効したことになる。
(イ)Xを排除する目的であえてAとの売買契約を拒絶したと認めるべき証拠はなく、故意に本件専任媒介における条件の成就を妨げたとすることはできず、信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。上、Xの媒介 により本件売買契約が成立したものと同視すべき事情があるとすることはできない。
(ウ)本件売買契約は、Aが引き合わせ当事者間でXを排除して成立している以上、媒介契約書(ばいかいけいやくしょ)
宅建業者は、媒介契約を締結したときは、遅滞なく、
一定の事項を記載した書面を作成し、
依頼者(売主・買主・貸主・借主)に交付しなければならない。
この書面を「媒介契約書」と呼んでいる(宅建業法第34条の2第1項)
。媒介契約書に記載されるべき事項は詳細に法定されている。
の特約が適用されるというべきであるが、Xは、Aへの売却を拒絶された後は、特に積極的な媒介行為をしていない。Bの媒介が成立したのは、Y1が買主に前払い金の支払を要求しないことに方針を変更していたところに、Bが売買の話を復活させたためであり、Bの手腕によるところが大きい。Xの媒介行為が報酬を支払うに値する程度に成約に寄与したものと認めることはできず、本件特約によっても報酬を請求することはできない。
(3) まとめ
本件では、当初の媒介行為が報酬を支払うに値する程度に成約に寄与していないこと及び売主が故意に当初の媒介による契約を妨害していないことを理由に、媒介契約書(ばいかいけいやくしょ)
宅建業者は、媒介契約を締結したときは、遅滞なく、
一定の事項を記載した書面を作成し、
依頼者(売主・買主・貸主・借主)に交付しなければならない。
この書面を「媒介契約書」と呼んでいる(宅建業法第34条の2第1項)
。媒介契約書に記載されるべき事項は詳細に法定されている。
の特約によってもその請求をすることができないとしている。
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