制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例直接取引された場合の媒介業者の報酬請求権
岡山地裁判決 平成15年1月15日
(ホームページ下級裁主要判決情報)
《要旨》
売主らが共謀して媒介手数料を免れる目的で直接取引(ちょくせつとりひき)
宅建業者に媒介を依頼した者が、その宅建業者
の紹介によって知った相手方と、宅建業者を排除
して直接目的物件の売買または交換の契約を締結
すること。した場合に、媒介業者の報酬請求が認められた事例
(1) 事案の概要
業者Xは、売主Y1から土地付建物の売却の依頼を受けた。Xは、チラシなどの広告をしたが、価格設定が高額で本物件が市街化調整区域(しがいかちょうせいくいき)
都道府県が、都市計画区域の中で定める区域。
市街化調整区域に指定されるのは、
建築物の密度が低い地域である。市街化調整区域では、
少数の例外を除いて住宅等の建築が禁止されている。内で、道路もないため買手がつかなかった。そこで、本物件の西側通路の所有者と交渉し、通行の同意を取った上で、Y1を説得して価格を3,500万円として新聞にチラシを入れ、オープンハウス販売しようとする物件の内部を一定の期間、
担当営業員が常駐して、買い希望客に公開す
るという販売促進活動を指す。を開催するなどした。
平成12年5月、Xは広告を見た買主Y2を本物件に案内し、Y2から買受けの依頼を受けた。価格交渉の結果、売買代金3,400万円での売買の合意がほぼ成立したが、同年8月になって、Y1から本物件の売買をやめたいとの連絡があったので、Xは、Y2に売買契約の中止を連絡した。
他方で、Y1とY2は、同月、代金3,280万円で本物件売買の直接取引(ちょくせつとりひき)
宅建業者に媒介を依頼した者が、その宅建業者
の紹介によって知った相手方と、宅建業者を排除
して直接目的物件の売買または交換の契約を締結
すること。を合意した。Xは、Yらは共謀して、直接取引(ちょくせつとりひき)
宅建業者に媒介を依頼した者が、その宅建業者
の紹介によって知った相手方と、宅建業者を排除
して直接目的物件の売買または交換の契約を締結
すること。を行い、媒介手数料相当額の損害を被ったとして、その支払を求めた。
これに対しYらは、Xの媒介を明確に断った時点で、本物件売買の話はなくなっており、媒介行為はありえない、として争った。
(2) 判決の要旨
(ア)XとY1との間で媒介契約書(ばいかいけいやくしょ)
宅建業者は、媒介契約を締結したときは、遅滞なく、
一定の事項を記載した書面を作成し、
依頼者(売主・買主・貸主・借主)に交付しなければならない。
この書面を「媒介契約書」と呼んでいる(宅建業法第34条の2第1項)
。媒介契約書に記載されるべき事項は詳細に法定されている。
は作成されていないが、Y1のために広告、買受希望者との交渉等を行った事実が認められ、口頭での媒介契約は成立したものと認められる。XとY2との間も媒介契約書(ばいかいけいやくしょ)
宅建業者は、媒介契約を締結したときは、遅滞なく、
一定の事項を記載した書面を作成し、
依頼者(売主・買主・貸主・借主)に交付しなければならない。
この書面を「媒介契約書」と呼んでいる(宅建業法第34条の2第1項)
。媒介契約書に記載されるべき事項は詳細に法定されている。
は作成されていないが、売買交渉を行い、住宅ローンの申込みを援助した事実や現地案内したこと等から、Y2が購入意思を示したときに、口頭での媒介契約が成立したものと認められる。
(イ)Xの媒介によりY1とY2との間に、代金3,400万円の売買契約が成立する予定であったものと認められ、Y1とY2とで取り決められた売買代金3,280万円も3,400万円を基礎に合意したもので、Xの媒介行為とY1、Y2の間の直接取引(ちょくせつとりひき)
宅建業者に媒介を依頼した者が、その宅建業者
の紹介によって知った相手方と、宅建業者を排除
して直接目的物件の売買または交換の契約を締結
すること。との間には、相当因果関係が存在する。
(ウ)媒介契約は、売買契約を停止条件(ていしじょうけん)
将来発生することが不確実な事実を契約等の
効力の発生要件とする場合の不確実な事実を
いう。例えば、「うまく入社できたらこの家
を安く売却する」というような契約をしたと
きは、入社することが停止条件である。に相当の報酬を支払うことを約す契約で、依頼者が故意に停止条件(ていしじょうけん)
将来発生することが不確実な事実を契約等の
効力の発生要件とする場合の不確実な事実を
いう。例えば、「うまく入社できたらこの家
を安く売却する」というような契約をしたと
きは、入社することが停止条件である。の成就を妨げたときは、その条件を成就したものとして、媒介者は依頼者にその報酬を請求しうるものであり(民法130条)、報酬額の取決めがないときは、相当額の媒介報酬(ばいかいほうしゅう)
宅建業者の媒介により、売買・交換・
貸借契約が成立した場合に、宅建業者
が媒介契約にもとづき、依頼者から
受け取ることができる報酬のこと。を支払うべきである(商法512条商人がその営業の範囲内において他人のために
行為をしたときは、相当な報酬を請求すること
ができる。)。
(エ)報酬額については、諸般の事情を斟酌して判断し、報酬上限の80%に消費税分5%を加算した額に相当する支払を命ずる。
(3) まとめ
本判決では、相当因果関係が存在すると認められているが、実務上、媒介業者は、媒介契約を締結したときは、遅滞なく「媒介契約書(ばいかいけいやくしょ)
宅建業者は、媒介契約を締結したときは、遅滞なく、
一定の事項を記載した書面を作成し、
依頼者(売主・買主・貸主・借主)に交付しなければならない。
この書面を「媒介契約書」と呼んでいる(宅建業法第34条の2第1項)
。媒介契約書に記載されるべき事項は詳細に法定されている。
」を交付しなければならない(宅建業法34条の2)。
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