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タイトル:裁判事例建物賃貸借契約の更新と保証人の責任

最高裁判決 平成9年11月13日
(判例時報 1633号 81頁)
(判例タイムズ 969号 126頁)

《要旨》
 賃貸人は、建物賃貸借が更新された場合は、保証人(ほしょうにん)
債務者がその債務を履行しないときに、
その履行をする責任を負う者をいう。
に対して、改めて保証意思の確認をしていなかったとしても、その後の滞納賃料等についてもまた保証責任を問えるとした事例

(1) 事案の概要
 賃貸人Yは、賃借人Aと、昭和60年5月、月額賃料26万円、賃貸契約期間を2年間とするマンションの賃貸借契約を締結した。その際、Xは、Yとの間で、本件賃貸借契約に基づきAがYに対して負担する一切の債務につき連帯保証(れんたいほしょう)
債務者の債務を、他人が保証することを「保証」
という(民法第446条)。この「保証」の特殊な
形態として、保証人の責任を強化した「連帯保証」
がある(民法第454条)。
をした。
 本件賃貸借契約は、その後3回にわたり、いずれも期間を2年間として更新された。更新に際して、YがXに対して保証意思の確認の問い合わせをしたことも、また、Xにおいて引き続き保証人(ほしょうにん)
債務者がその債務を履行しないときに、
その履行をする責任を負う者をいう。
になることを明示的に了承することもなかった。
 ところが、2度目の更新後からAの賃料滞納が始まり、3度目の更新後はほとんど賃料の支払がされない状態となり、Yは、Xに対して、平成5年6月、Aの賃料不払を通知したうえで、Aとの契約を解除した。
 Yは、未払賃料等総額853万円余について保証債務(ほしょうさいむ)
債務を負う者がその債務を履行しないとき、
保証人である者が履行の責任を負う債務をいう。
請求権を有する旨、Xに通知した。これに対して、Xは、保証契約の効力は賃貸借の効力は賃貸借の合意更新後に生じた未払賃料債務等に及ばず、仮にそうでないとしても、Yの保証債務(ほしょうさいむ)
債務を負う者がその債務を履行しないとき、
保証人である者が履行の責任を負う債務をいう。
履行請求は信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
に反すると主張し、保証債務(ほしょうさいむ)
債務を負う者がその債務を履行しないとき、
保証人である者が履行の責任を負う債務をいう。
不存在確認請求の訴えを提起した。
 一審はXの債務不存在確認請求を認容したが、二審は、連帯保証(れんたいほしょう)
債務者の債務を、他人が保証することを「保証」
という(民法第446条)。この「保証」の特殊な
形態として、保証人の責任を強化した「連帯保証」
がある(民法第454条)。
契約の効力は、合意更新後の賃貸借にも及ぶとし、また信義側に反するものではないとして、Xの請求を棄却した。

(2) 判決の要旨
 (ア)期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人(ほしょうにん)
債務者がその債務を履行しないときに、
その履行をする責任を負う者をいう。
が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情がない限り、保証人(ほしょうにん)
債務者がその債務を履行しないときに、
その履行をする責任を負う者をいう。
が更新後の賃貸借から生じる更新後の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人(ほしょうにん)
債務者がその債務を履行しないときに、
その履行をする責任を負う者をいう。
は、賃貸人において保証債務(ほしょうさいむ)
債務を負う者がその債務を履行しないとき、
保証人である者が履行の責任を負う債務をいう。
の履行を請求することが信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生じる賃借人の債務についても保証の責めを免れない。
 (イ)本件の場合、特段の事情がうかがわれないから、本件保証契約の効力は更新後の賃貸借にも及び、Yにおいて保証債務(ほしょうさいむ)
債務を負う者がその債務を履行しないとき、
保証人である者が履行の責任を負う債務をいう。
の履行を請求することが信義側に反すると認めるべき事情もない本件において、Xは、保証の責めを免れない。

(3) まとめ
 本判決については、賃借人(主たる債務者)による賃料の滞納が累積しているのに、賃貸人が保証人(ほしょうにん)
債務者がその債務を履行しないときに、
その履行をする責任を負う者をいう。
に何らの通知もしなかったこと等により、その結論を批判する学説がある。賃貸管理にあたる業者としては、この裁判を参考にするにしても、対応については適切さにかけることがないように努めるべきであろう。

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