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タイトル:裁判事例借地権譲渡の承諾書に用いる印章

東京地裁判決 平成11年5月18日
(判例タイムズ 1027号 161頁)

《要旨》
 買主が、借地権(しゃくちけん)
建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいう。
譲渡に係る地主の承諾書に実印の押捺と印鑑証明書の添付を要請し、地主が拒否したために、売買の効力が発生せず、媒介業者に対し、報酬金の返還が命じられた事例

(1) 事案の概要
 Xは、平成9年8月、Yの媒介により、借地権(しゃくちけん)
建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいう。
付建物を代金3,480万円で買い受ける旨の売買契約を締結し、売主Aに手付金200万円を支払った。本件契約では、同年10月末までに、Aが地主Bから借地権(しゃくちけん)
建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいう。
譲渡の承諾書を得ることが停止条件(ていしじょうけん)
将来発生することが不確実な事実を契約等の
効力の発生要件とする場合の不確実な事実を
いう。例えば、「うまく入社できたらこの家
を安く売却する」というような契約をしたと
きは、入社することが停止条件である。
とされていた。Xは、本件契約の効力が発生しなかったときは、返還するとの約定で、Yに報酬金の内金(前渡金)として50万円を支払った。
 Yが借地権(しゃくちけん)
建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいう。
譲渡に係る承諾書の用紙を作成したところ、Xは、当該承諾書にBの実印の押捺と印鑑証明書の添付を要求した。Bは、従前から借地契約には実印を用いていないとしてこれを拒否し、そのため、本件売買契約の効力は発生せず、AはXに手付金を返還した。
 契約不成立により、Xは、Yに支払った報酬金の内金の返還を請求したが、Yはこれに応じなかったため、Xがその返還を求めて提訴し、Yは、Xが故意に停止条件(ていしじょうけん)
将来発生することが不確実な事実を契約等の
効力の発生要件とする場合の不確実な事実を
いう。例えば、「うまく入社できたらこの家
を安く売却する」というような契約をしたと
きは、入社することが停止条件である。
の成就を妨げたとして反訴した。
 一審(八王子簡裁)は、Xの請求を認容し、Yの反訴を棄却したが、Yが控訴した。

(2) 判決の要旨
 (ア)本件売買契約書には、停止条件(ていしじょうけん)
将来発生することが不確実な事実を契約等の
効力の発生要件とする場合の不確実な事実を
いう。例えば、「うまく入社できたらこの家
を安く売却する」というような契約をしたと
きは、入社することが停止条件である。
として借地権(しゃくちけん)
建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいう。
譲渡につき書面による承諾が必要である旨記載されているが、どのような印鑑が押捺されるべきかについては明示的な定めがない。
 (イ)一般に、不動産売買の必要書類には、当事者の意思の確実性を明確にする趣旨で、実印の押捺、印鑑証明書を添付する取引慣行があることは顕著な事実である。
 (ウ)借地権(しゃくちけん)
建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいう。
付建物の売買では、借地権(しゃくちけん)
建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいう。
譲渡について承諾が得られていることは重大な問題であり、地主の実印の押捺及び実印の真正を確認するための印鑑証明書の添付を求めることは、本件契約の約旨にかなった正当なことであり、理由がある。「書面による地主の承諾」の「書面」とは、地主により実印が押捺され、印鑑証明書が添付された書面を意味する。したがってXが停止条件(ていしじょうけん)
将来発生することが不確実な事実を契約等の
効力の発生要件とする場合の不確実な事実を
いう。例えば、「うまく入社できたらこの家
を安く売却する」というような契約をしたと
きは、入社することが停止条件である。
を故意に妨害したとはいえない。
 (エ)よって、本件控訴は理由がないから棄却する。

(3) まとめ
 本件のようなトラブルを避けるために、媒介業者としては、契約の準備に当たり、承諾書等に用いる印章の種類についても事前に当事者の了解を得ておくなどの配慮が必要である。

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