トラブル事例大項目:土地建物の賃貸借契約に関するもの
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タイトル:裁判事例マンション賃借人の迷惑行為

東京地裁判決 平成10年5月12日
(判例時報 1664号 75頁)

《要旨》
 マンションの賃借人が嫌がらせ行為を続け、隣室の住人に立退きを余儀なくさせ、賃貸人に損害を与えた場合、賃貸人は契約解除、建物明渡し請求ができるとされた事例

(1) 事案の概要
 貸主Xは、平成7年7月、媒介業者Aの媒介で、X所有のマンション506号室を借主Y1に賃貸した。Y1は、同居人Y2と一緒に入居したが、入居直後から、両隣りの住民等に対し、騒音がうるさいと執拗に抗議を重ねた。505号室の住民Bは、夜中に騒音を発したことは全くなかったが、Yら(Y1及びY2)から、再三にわたり執拗に抗議をを受け、また、壁を叩く等の嫌がらせを受けたため、平成8年5月、退去した。507号室の住民Cは、異常な騒音を発生させたことはなかったが、Yらから、何回も怒鳴られ、夜中に壁を叩かれたりしたため、平成7年11月、退去した。平成8年1月に507号室に入居したDも、Yらから大声で怒鳴られ、嫌がらせをされたため、同年10月402号室に移転した。
 Yらは、本件マンションに入居するまで、Eのコーポを賃借していたが、ここでも隣室の住民に対し迷惑行為を繰返し行ったので、Eから明渡請求訴訟を提起され、賃借していた部屋を明け渡す旨の裁判上の和解をして、本件マンションに転居したものであった。Yらの両隣り505号室と507号室は、Yらの嫌がらせにより空室となったが、二度の訴訟とYらの言動が知れ渡り、入居者はなかった。
 本件契約には、賃借人は近隣の迷惑となる一切の行為をしてはならず、これに反したとき、または共同生活の秩序を乱したときは、無催告で解約できるとの特約があった。
 Xは、Yらに対して、共同生活の秩序を乱し、近隣の迷惑となる行為をしたとして、契約を解除し、建物の明渡しを求めた。

(2) 判決の要旨
 (ア)Yらは、隣室から発生する騒音は受忍限度を超える程度のものではなく、これを受容すべきであったにもかかわらず、何回も執拗に音がうるさいなどと文句を言い、壁を叩いたり、大声で怒鳴ったりするなどの嫌がらせ行為を続け、隣室からの退去を余儀なくさせるに至ったものであり、Yらの各行為は、特約に定める近隣の迷惑となる行為に該当し、また、共同生活上の秩序を乱す行為に該当する。さらに、Yらの行為によって、両隣りの部屋が長期間にわたって空室となり、Xが多額の損害を被っている。
 (イ)以上のようなYらの行為は、本件賃貸借における信頼関係を破壊する行為に当たる。
 (ウ)よって、Xの請求は理由があり、Yらは建物を明け渡せ。

(3) まとめ
 マンション、アパートの賃貸借に当たり、騒音をめぐって紛争になることは多いが、本件は、騒音が発生していないのに発生したといって、近隣への迷惑行為を行い、隣室居住者を退去させた賃借人の行為が、特約に違反し、信頼関係を破壊する行為に当たるとして、無催告解除を認めた事例である。

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