制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
最新の情報については、
「RETIO判例検索システム」
「特定紛争案件検索システム」
「ネガティブ情報等検索サイト」(国土交通省)
「不動産のQ&A」
をご活用ください。
検索ボタンをクリックして頂くと、該当する事例の一覧が表示されます。
トラブル事例大項目:土地建物の賃貸借契約に関するもの (原状回復を除く) |
トラブル事例中項目:管理等に関するもの | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例マンション賃借人の迷惑行為
東京地裁判決 平成10年5月12日
(判例時報 1664号 75頁)
《要旨》
マンションの賃借人が嫌がらせ行為を続け、隣室の住人に立退きを余儀なくさせ、賃貸人に損害を与えた場合、賃貸人は契約解除、建物明渡し請求ができるとされた事例
(1) 事案の概要
貸主Xは、平成7年7月、媒介業者Aの媒介で、X所有のマンション506号室を借主Y1に賃貸した。Y1は、同居人Y2と一緒に入居したが、入居直後から、両隣りの住民等に対し、騒音がうるさいと執拗に抗議を重ねた。505号室の住民Bは、夜中に騒音を発したことは全くなかったが、Yら(Y1及びY2)から、再三にわたり執拗に抗議をを受け、また、壁を叩く等の嫌がらせを受けたため、平成8年5月、退去した。507号室の住民Cは、異常な騒音を発生させたことはなかったが、Yらから、何回も怒鳴られ、夜中に壁を叩かれたりしたため、平成7年11月、退去した。平成8年1月に507号室に入居したDも、Yらから大声で怒鳴られ、嫌がらせをされたため、同年10月402号室に移転した。
Yらは、本件マンションに入居するまで、Eのコーポを賃借していたが、ここでも隣室の住民に対し迷惑行為を繰返し行ったので、Eから明渡請求訴訟を提起され、賃借していた部屋を明け渡す旨の裁判上の和解をして、本件マンションに転居したものであった。Yらの両隣り505号室と507号室は、Yらの嫌がらせにより空室となったが、二度の訴訟とYらの言動が知れ渡り、入居者はなかった。
本件契約には、賃借人は近隣の迷惑となる一切の行為をしてはならず、これに反したとき、または共同生活の秩序を乱したときは、無催告で解約できるとの特約があった。
Xは、Yらに対して、共同生活の秩序を乱し、近隣の迷惑となる行為をしたとして、契約を解除し、建物の明渡しを求めた。
(2) 判決の要旨
(ア)Yらは、隣室から発生する騒音は受忍限度を超える程度のものではなく、これを受容すべきであったにもかかわらず、何回も執拗に音がうるさいなどと文句を言い、壁を叩いたり、大声で怒鳴ったりするなどの嫌がらせ行為を続け、隣室からの退去を余儀なくさせるに至ったものであり、Yらの各行為は、特約に定める近隣の迷惑となる行為に該当し、また、共同生活上の秩序を乱す行為に該当する。さらに、Yらの行為によって、両隣りの部屋が長期間にわたって空室となり、Xが多額の損害を被っている。
(イ)以上のようなYらの行為は、本件賃貸借における信頼関係を破壊する行為に当たる。
(ウ)よって、Xの請求は理由があり、Yらは建物を明け渡せ。
(3) まとめ
マンション、アパートの賃貸借に当たり、騒音をめぐって紛争になることは多いが、本件は、騒音が発生していないのに発生したといって、近隣への迷惑行為を行い、隣室居住者を退去させた賃借人の行為が、特約に違反し、信頼関係を破壊する行為に当たるとして、無催告解除を認めた事例である。