制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例ピッキング盗難被害における賃貸人の管理義務
東京地裁判決 平成14年8月26日
(判例タイムズ 1119号181頁)
《要旨》
防犯の責任は賃借人自らが行うべきであるとして、ピッキング被害に遭った賃借人の損害賠償請求が棄却された事例
(1) 事案の概要
貴金属の加工、販売等を営むXは、平成5年11月、賃貸用ビルの7階部分の一室を事務所として使用するため、賃貸人Yと賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた。
その後、本件賃貸借契約は更新されたが、Xは、平成12年2月28日夜から翌29日朝までの問に同事務所に保管していた宝石類、現金等(被害額時価合計109万円余)を盗取されたとして、警察署に被害届けを提出した。
Xは、Yに対し、主に本件盗難があったことを理由として、賃貸借契約を解約する旨申し入れ、同年5月本件事務所から退去した。
Xは、Yに対し、本件盗難はピッキング被害によるものだとし、本件盗難までに同種の被害が多発しており、Yも本件ビル及びその近隣でピッキング被害が頻発していたのを知っていたのであるから、本件賃貸借契約の賃貸人としての管理責任の一環として、本件事務所の賃借人であるXに対し、被害の事実を告知し防犯の注意を喚起する義務及び機械警備の導入等ピッキング被害に遭いにくい鍵に交換する等の被害防止策を講じる義務があったのにこれを怠り、何らの措置も講じなかった管理義務違反に当たるとして、損害賠償として、合計148万円余を支払うよう提訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)本件盗難がピッキングによるものとは認定し難く、判断を覆す証拠もない。
(イ)Xの主張するような賃借人所有財産を盗難等から保護することを内容とする管理義務は、賃貸借契約から当然に導かれるものではなく、特約や信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。上の付随義務として認められ、賃貸人がこのような管理義務をどの程度負うかは個々の賃貸借契約の事情に応じて判断される。
(ウ)本件賃貸借契約においては、Yは既存の鍵を維持管理すること以上にXの盗難被害を防ぐべき義務は負っていないと解するのが相当である。
(エ)また、Yは本件ビルにおける窃盗被害がピッキングによるものか否かを知らず、警察から指導や報告を受けたこともないこと等から、YがXに対し、ピツキング被害防止策を講じ、あるいは窃盗被害を報告すべき義務を負っていたということはできず、Yに債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。責任は認められない。
(3)まとめ
本件では、賃借人の所有財産を盗難等から保護することを内容とする賃貸人の管理義務は、賃貸借契約から当然に導かれるものではなく、特約や信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。上の付随義務として認められ、個々の契約の事情に応じて判断されるとされた
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