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タイトル:裁判事例マンションの方位についての説明義務

京都地裁判決 平成12年3月24日
(判例タイムズ 1098号 184頁)

《要旨》
 マンションの向きが62度西を向いているのに「全戸南向き」と表示した売主業者には、信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
上の表示・説明義務違反があるとされた事例

(1) 事案の概要
 買主Xら(13世帯)は、平成6年5月から10月にかけて、売主業者Yの新築マンションを販売代理業者A(Yの子会社)から買い受け、平成7年4月入居した。
 Yは、分譲に当たり、パンフレットには、「全戸南面、採光の良い明るいリビングダイニング」と、また、新聞広告・折込チラシにも「全戸南向き」「全戸南向の明るい室内」と記載した。なお、チラシの敷地配置図には、方位を記載し、バルコニーが真南から約40度西に向いていることを示していた。しかし、本件マンションは、バルコニー側が真南から62度11分西方向に向いていた。
 Xらは、平成10年2月、Yに対し、全戸南向きと表示されていたのに、62度西を向いており、日照の減少、光熱費の増加、価格減少等の損害を被ったとして、債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
ないし不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。
を理由に、損害賠償を求めた。

(2) 判決の要旨
 (ア)業者には、買主の意思決定に重要な意義を持つ事実について、不正確な表示、説明を行わないという信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
上の附随義務がある。特に未完成マンションの場合、現地見分により向きを確かめることができないから、売主業者は、マンションの向きについて不正確な表示・説明を行わないよう注意すべき信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
上の附随義務を負う。
 (イ)Yの作成したパンフレット等の南向きとの記載は、本件マンションが62度西に向いているから、不正確な表示、説明であり、折込チラシの真南から40度西向きとの表示も、本件マンションは南向きというよりも西向きに近いのであるから不正確な表示、説明と言わざるを得ず、また、買主に設計図面まで精査するよう要求することはできないから、Yには信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
上の附随義務違反がある。

(3) まとめ
 不動産広告に係る不正確な表示・説明は、宅建業法の信義誠実を旨とする業務処理原則や誇大広告等の禁止条項に違反したり、「不動産の表示に関する公正競争規約不動産の広告に関する不動産業界の約束ごと
であり、政府(公正取引委員会)が正式に認定
したものを「不動産の表示に関する公正競争規約」という。
不動産業界では一般的に「表示規約」または
「広告規約」と呼んでいる。
」違反に該当する場合があるが、本件は、売主業者の信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
上の附随義務違反を認めた事例である。
 「青田売り(あおたうり)
元来は「稲が十分に成熟しないうちに収穫高を
見越してあらかじめ産米を売ること」の意味で
あるが、不動産業界においては、未完成の宅地
や建物の売買等をいう。
」マンションの場合には、買主がモデルルームを見学・調査していても、入居後にはじめて確認できる面も多い。
 売主業者は、正確な情報を伝えることはもちろん、不正確な表示や曖昧な説明をできるだけ避け、どうしても確認できない場合には、ありのまま説明するよう留意する必要がある。

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