制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例抵当権者による賃料債権差押えと賃借人の相殺の優劣
最高裁判決 平成13年3月13日
(判例時報 1745号 69頁)
(判例タイムズ 1058号 89頁)
《要旨》
抵当権者が賃料債権を差押え(さしおさえ)
債務者の財産の売買等を禁止するための
執行裁判所又は執行官の執行処分をいう。た後は、賃借人が抵当権設定登記後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権(じどうさいけん)
相殺しようとする者の債権。相殺される側の
債権を受働(じゅどう)債権という。とする賃料債権との相殺(そうさい)
2人の者が互いに相手に対して同種の債権を
持っているとき、相手方への意思表示によって
その債務を対当額で消滅させることをいう。をもって、対抗することはできないとされた事例
(1) 事案の概要
X銀行は、昭和60年9月、A所有の建物に対して根抵当権を設定して登記した。
Yは、昭和60年11月、Aとの間に建物賃貸借契約を締結し、Aに対して保証金3,150万円を預託していたが、平成9年2月、Yは、本件建物についての賃貸借契約を同年8月末限りで解消し、同年9月以降改めて賃貸借契約を締結し(保証金330万円)、新賃貸借契約の保証金には従前の賃貸借契約における保証金の一部を充当し、残額2,820万円は同年8月末日までにAがYに返還することを約した。しかし、その期限までに返還は履行されなかったので、YとAは、その返還債務につき次のとおり合意した。
ア 保証金返還債務のうち、1,168万円余について、建物の平成12年9月分までの賃料の支払債務とそれぞれ各月の前月末日に対当額で相殺(そうさい)
2人の者が互いに相手に対して同種の債権を
持っているとき、相手方への意思表示によって
その債務を対当額で消滅させることをいう。する。
イ 保証金返還債務のうち、1,651万円余を平成9年12月末日限りに支払う。
その後Xは、Aの債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。により、当該根抵当権の物上代位(ぶつじょうだいい)
抵当権が、その目的物の売却、賃貸、滅失、
毀損、または土地収用等によって債務者が受
け取ることになる金銭等に及ぶことをいう。権に基づきAのYに対する賃料債権(賃料月額30万円)について債権差押命令の申立てをした。
平成10年1月、差押命令がなされ、同年7月、XはYに対し、債権差押命令による取立権に基づき、同年2月から6月までの本件建物の賃料150万円の取立訴訟を提起した。
第一審(京都地判 平成11年2月15日)、控訴審(大阪高判 平成11年7月23日)は、ともにXの請求を認容した。
(2) 判決の要旨
(ア)抵当権者が物上代位(ぶつじょうだいい)
抵当権が、その目的物の売却、賃貸、滅失、
毀損、または土地収用等によって債務者が受
け取ることになる金銭等に及ぶことをいう。権を行使して賃料債権の差押え(さしおさえ)
債務者の財産の売買等を禁止するための
執行裁判所又は執行官の執行処分をいう。をした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権(じどうさいけん)
相殺しようとする者の債権。相殺される側の
債権を受働(じゅどう)債権という。とする賃料債権との相殺(そうさい)
2人の者が互いに相手に対して同種の債権を
持っているとき、相手方への意思表示によって
その債務を対当額で消滅させることをいう。をもって、抵当権者に対抗することはできない。
(イ)賃借人と賃貸人との間で、相殺(そうさい)
2人の者が互いに相手に対して同種の債権を
持っているとき、相手方への意思表示によって
その債務を対当額で消滅させることをいう。について、あらかじめ合意していた場合でも、物上代位(ぶつじょうだいい)
抵当権が、その目的物の売却、賃貸、滅失、
毀損、または土地収用等によって債務者が受
け取ることになる金銭等に及ぶことをいう。権の行使としての差押え(さしおさえ)
債務者の財産の売買等を禁止するための
執行裁判所又は執行官の執行処分をいう。がされた後に発生した賃料債権については、物上代位(ぶつじょうだいい)
抵当権が、その目的物の売却、賃貸、滅失、
毀損、または土地収用等によって債務者が受
け取ることになる金銭等に及ぶことをいう。をした抵当権者に対して相殺(そうさい)
2人の者が互いに相手に対して同種の債権を
持っているとき、相手方への意思表示によって
その債務を対当額で消滅させることをいう。合意の効力を対抗できない。
(3) まとめ
本件は、これまで、学説・下級審で判断が分かれていた抵当権の物上代位(ぶつじょうだいい)
抵当権が、その目的物の売却、賃貸、滅失、
毀損、または土地収用等によって債務者が受
け取ることになる金銭等に及ぶことをいう。と相殺(そうさい)
2人の者が互いに相手に対して同種の債権を
持っているとき、相手方への意思表示によって
その債務を対当額で消滅させることをいう。の優劣関係について、最高裁として、抵当権登記との先後を基準とする対抗要件説に立つことを初めて明らかにしたものである。
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